少しだけ2人で



「結構混んでるね」
「せやなぁ」

目的の神社にたどり着けば、見渡す限り人、人、人で、身動きがとれなくなりそうだった。
着物を着ているせいで、必然的に歩みが遅くなる私の隣を歩いてくれる蔵ノ介と会話をしながら、境内へと向かう。
「みんな私たち置いてどんどん先行っちゃてるね……」
千里君に肩車されてる金ちゃんが目印なんだけど、それさえもわからなくなりそうなくらい遠く離れてしまっている。
「ま、ええんちゃう?多分振る舞いしてるとこで合流できるやろし」
それに、と蔵ノ介がぎゅっと私の手を握る。
「このほうがデートみたいでなんや嬉しいわ」
ひなは?という問いかけに、私もだよと頷く。
「それにな、あいつらとはちょっと離れとるくらいが丁度ええねん」
「なんで?」
「あいつらとおると何かと問題が起こるんや……」

心底困った顔をした蔵ノ介曰く。
「去年は金ちゃんが千歳の肩に乗ったまま除夜の鐘ついてな。戻ってきた鐘つき棒に吹っ飛ばされたり、その前の年は振る舞いの年越し蕎麦を謙也と金ちゃん2人で全部平らげてもうたり……。俺と小春でいろんなとこに謝りに行ってばかりやったんや」
想像はしていたけれど、あまりのすさまじさに乾いた笑いしかでてこない。

「せっかくひなもおるんやから、今年はそういうことに巻き込まれたないねん」
押し競饅頭のようになっている人ごみから守るかのように、私の肩を抱く蔵ノ介。
付き合いだしたばかりの頃は恥ずかしかったけれど、今ではこうして貰えることがすごく嬉しい。
えへへ、と笑顔を向ければ蔵ノ介も柔らかい笑みを返してくれる。

「あ、そうだ。蔵ノ介は新年のお願い事決めた?」
「あぁ」
「……やっぱり全国優勝?」
「んー、例年やったらそれやけどな」
繋いだ手を私の顔の辺りまで持ち上げて、手首を見せる。
「ひながクリスマスにくれたミサンガがあるやろ」
せやから優勝祈願はこれで十分、なんていう蔵ノ介になんだかむずかゆくなってしまう。
「やから、今回は」

ずーっとひなと一緒におれますように、や。

耳元で囁かれる低音に、体温が急上昇する。

「ひなは?何を願うん?」
「私はみんなの優勝祈願と……、蔵ノ介とおんなじこと」
上気した顔を向けると、蔵ノ介は笑みを深くして頭を撫でてくれた。




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