みんなで行こう初詣



今年も残すところあと2時間余り。
何とはなしに聞いていた紅白歌合戦も最高潮を迎える頃。
「いってきまーす!」
こたつでみかんを食べている姉に伝えて、初詣の待ち合わせ場所へ向かった。


***


「お待たせしました!」
「ひな、遅刻やでー!」
待ち合わせ場所の公園に着くと、既にみんなは到着していた。
金ちゃんの元気な声にみんなが一斉にこちらを見た瞬間、全員の目が大きく見開かれた。

「ひな、キモノやー!」
物珍しそうな顔をして、1番に駆け寄ってきてくれたのは金ちゃん。
「むぞらしかー」
金ちゃんのお守りをしていたらしい千里君も熊本弁で褒めてくれる。
「よう似合うとるわぁ」
女の子はええわね、と小春ちゃんが言えば、
「俺にとっては小春のがかわええで」
相変わらずなユウジ君。
「一瞬誰かわからんかったわ」
「このキモノはひなはんの?」
「ううん、お姉ちゃんのだよ。着付けてくれたのもお姉ちゃん」
健二郎君や銀さんも会話に加わる。

ぴろりろり〜ん

2人と話していたら、すぐ横でなんとも気が抜ける機械音。

「まぁ、馬子にも衣装ですわ」
「ちょ、光君何撮ってるの!?」
ていうか、さり気なくめちゃくちゃ失礼なこと言ってませんか!?
「謙也さんに送ったろ思いまして」
「あれ、謙也君来てないの?」
「なんやしらんけど、胃腸風邪にかかったらしいっスわ」
……謙也君、ご愁傷様。
ひとりだけ布団の上で寝てないといけないのはさみしいよね、きっと。
あとでお見舞いメール送っておこう。
「謙也さん、めっちゃ悔しがるでぇ」
ものすごく意地悪な顔をしてメールを打ってる光君にまさか、と返して、私は唯一何の反応も見せていない人物の方へ歩み寄る。
「……蔵ノ介?」
放心状態の彼の目の前で手をひらひらさせると、焦点が曖昧だった視線がようやくこちらを向く。
「だいじょ、っ!?」
調子悪いのかなと思って訊ねた瞬間、思いっきり抱きしめられた。
「く、くく蔵ノ介!」

みんな見てるのに!

焦る私を無視して、彼は抱きしめる腕に力を込める。
「……ひなの阿呆」
しかも、耳元で囁かれたのは、なぜか不満。
は?と喉元まで出掛かった声は、続く蔵ノ介の熱を帯びた言葉に押し留められた。
「なしてみんなと出かけるときにそないな格好してくるん?」

俺がひとりじめできひんやん。

その言葉に腕の中で彼を振り仰げば、滅多に見られないほど顔を紅くした蔵ノ介。
「俺がどうにかなりそうなくらい似合うとるわ、キモノ」
「……ありがと」
珍しく照れてる蔵ノ介がなんだか可愛くて、自然と口元が綻ぶ。
お礼を返すと、そっと額に口付けが落とされた。


「あーもう、馬鹿ップルはおいて、さっさと初詣行きましょうや」
直後に響いたこれみよがしな光君の台詞に、私が顔を真っ赤に染めたのは言うまでもない。




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