小さなシアワセ



そして12月24日、クリスマスイヴ当日。
午前の部活を早めに切り上げて、一旦家に帰ったあとひなと待ち合わせ。
鍋パーティーの材料を買いに行く約束をしとった。

恒例の鍋パーティー、毎年誰かんちに集まるんやけど、今年はなかなか候補が決まらんかった。
俺んちは友香里の友達が来るし、謙也んとこも弟が友達を呼ぶ。財前とこは甥っ子が小さいから大勢で押しかけるわけにはいかんし、寮暮らしである銀は必然的に除外され、小石川や千歳、小春とユウジもだめ。
残るは金ちゃんちかひなんちかとなったわけやけど、金ちゃんが主催やと鍋がたこ焼きにかわりかねんし、両親おらん状態であの子が料理とかしたらそれはそれで危険やろう。
それで結局今年のパーティー会場はひなんちになった。
ひなは年が離れとるお姉さんと2人暮らし。
けど、そんなお姉さんも職場の人とクリスマスパーティー兼ねた忘年旅行に出かけるらしく、ひな曰く「みんなが来てくれたらさみしくないし、うちでいいなら好きに使って」とのこと。
最初は準備も全部やっておくと言うてたひなやけど、参加する人数が人数やからひな1人では大変やろ思て、俺も手伝うことにした。



「お待たせ!」
つらつらと回想に耽っていたら、ぱたぱたとひなが駆けて来た。
「そないに慌てんでもええのに」
息を切らしとるひなに苦笑を返せば、「だって蔵ノ介の姿が見えたから」と可愛らしい答えが返される。
答えだけやのうて、私服姿もめっちゃかわええんやけどな。

「よう似合うとるよ」
「え?」
「今日の服。ひなにめっちゃ似合うとる」
「あ、ありがと……」
素直に感想を述べれば、ひなは顔を赤くして俯く。

あかん、可愛すぎや。
思わず抱きしめたなった衝動を無理矢理押さえ込んで、代わりに左手を差し出す。
「ほな、行こか」
数回目を瞬かせてきょとんとした顔をするひなに、
「買い物しとる間だけでもクリスマスデートの気分味わいたいやん?」
せやから手繋ご、と促せば、彼女は遠慮がちに俺の掌に指先で触れてきた。
その手をきゅっと包み込んでひなの歩幅に合わせてゆっくり歩く。

「……なん?」
歩いてる最中、ひなからの視線を感じて彼女の目を見つめ返せば、彼女ははにかんで、
「蔵ノ介の隣歩けて幸せだなって」
理性の箍が外れかねないことを平気で言う。
ほんま何でそないにかわええねん。
「俺もや」
平静を装って返すと、彼女は一層可愛く笑った。


クリスマス、完全に2人っきりにはなれへんかったけど、これはこれで幸せやなぁ。




-4-

[ | ]

back

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -