みんなでクリスマス!3



「メリークリスマス!」
自室に取りにいったもの、それは9つの小さなラッピングバック。
赤と緑のクリスマスカラーに彩られたそれには、小さく私だけにわかるようにみんなのイニシャルが記してある。
「はい、これ私からのクリスマスプレゼント」
それをみんなに気づかれないように確かめながら、それぞれの手に渡していく。
「わーい!なぁなぁ、開けてもええ?」
きらきらと目を輝かせる金ちゃんに「どうぞ」と頷けば、他のメンバーもいそいそと袋を開ける。


「……ミサンガ?」
そう言ったのは蔵ノ介。
彼が手にしているのは、蔵ノ介が好きな若草色をベースにしたグリーン系のミサンガ。
「そうだよ」
「あれ、白石のとワイの色がちゃうで?」
そういう金ちゃんが手にしているのは、彼の髪色といつも着ているヒョウ柄のタンクトップに合わせた赤と山吹色のストライプのもの。
「ほんまや。もしかして、ひな先輩の手作りやったりするんスか?」
「まぁね」
「うっそ」
信じられないものを見たという顔をする光君に少し腹が立ったので、彼が手にしている5色(勿論選んだのはピアスと同じ色だ)のミサンガを取り上げようとすれば、「冗談やって」と窘められた。
「なんだかんだで先輩が器用なんは知ってますんで」
「財前、お前ありがとうくらい素直に言ったらええやんか」
呆れ顔の謙也君の左手首には既に、オレンジの地に黄色い星が散らばるミサンガが結ばれていた。
「おおきにね、ひなちゃん」
ほれ、ユウ君もちゃんとお礼言いや、とそっぽ向いてるユウジ君の襟を捕まえてる小春ちゃんと、捕まえられているユウジ君の腕にもそれぞれに渡したものが結ばれていた。
因みに彼らにはラブルスらしく色違いのハート柄(色は小春ちゃんが白地にピンクの柄、ユウジ君が黒地に水色の柄のもの)をプレゼントした。

「こん違いは何ね?」
紺地に水色で柄を編みこんだミサンガを顔の前に掲げて首を捻る千里君。
「私が思いついたみんなのイメージカラーみたいなものだよ」
それぞれの髪色だったり外見だったり(ラブルスみたいな例外もあるけど)で私がなんとなく思いついた色。
因みに銀さんは名前からイメージしてグレー(銀色は合わなかったから)と黒のモノトーン。
「へぇ、センスええなぁ」
健二郎君は縁の下の力持ちだから、ブラウンとミントで落ち着いた感じのものにしてみたんだけど、どうやら本人も気に入ってくれたようだ。
「せやけどひなはん、なしてミサンガなんや?」
疑問を口にしたのは銀さん。
「それは勿論、来年の全国優勝を願ってだよ」
私は今年の夏はまだ四天宝寺にいなかったけど、今年の成績が準優勝だったことは知っている。
そしてみんながそれを悔しく思っていることも。
特に蔵ノ介は部室に飾られている銀メダルを見るたび、なんとも言えない顔をするから。
「私は選手じゃないから試合で結果を残せない分、せめてみんなに勝運が向くように神様にお願いしてみようと思って」
神頼みなんてお呼びじゃないって言われるかもしれないけど、運も実力のうちっていうじゃない?
と半分茶化すつもりで言ったのに、みんなはしんと静まり返ってしまった。

……あれ、私なんか変なこと言ったかな?

「ひな、」
戸惑っている私を蔵ノ介が静かな声で呼んだ。
「は、はいっ」
少し上擦った声で返事をするや否や、蔵ノ介の香りに包まれる。
抱きしめられた、と自覚するまで一瞬もかからない。

「優勝旗、絶対持たしたるって約束するわ」

熱を帯びた声が耳元で囁くのと、抱きしめる腕に力がこめられたのはほぼ同時。

「……うん、楽しみにしてるね」
蔵ノ介の言葉に応えるように、私も彼の背に腕を回してしっかりと抱きついた。



「なぁ〜財前、何も見えへんのやけどー」
「遠山にはまだ早いわ」

金ちゃんの声で、はたと他のメンバーの存在に気づく。

見 ら れ た !

恥ずかしくなって、慌てて蔵ノ介を軽く突き飛ばせば、小さく「金ちゃん、後で毒手や」という物騒な言葉が降ってきた。
……ごめん、金ちゃん。

「けどまぁ、白石の言葉やないけど、ひなが俺らんこと思ってミサンガまで作ってくれたんや。優勝旗持たしたらなあかんな」
「せやねぇ」
どこか苦笑気味の謙也君に小春ちゃんが頷く。
「思う存分相手を笑かしたろやないかい!」
「千歳はん、サボったらあかんで?」
「わぁっとぉばい」
その後を受けて、ユウジ君、銀さん、千里君。
「やったら、締めにいっちょいっとこか!」
健二郎君の言葉を合図にみんなが一斉に叫んだ。

「「「勝ったモン勝ちやー!!!」」」




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