「って、休みかーいっ!」

と、思わず声を大にして叫んでしまったのは、登校途中、偶然に見てしまったスマホの画面。
白石の名前の横に、

『風邪引いた。休む』

という文字列が表示されていたから。

……まぁ、仕方ないか。肌寒いくらいの気温の中で、水が滴るほどのずぶ濡れになれば。

呆れ半分の溜息をつきながら、多分今日の学校は上から下まで真夏に雪が降ったような大騒ぎになるだろうな、なんて考えていると、非常にめんどくさい可能性に思い当たる。

あいつに関して問い詰められるのは私じゃんっ!

仮とはいえ学校中に白石の彼女という認識が広まった今日この頃。
これまで無遅刻無欠席だったあいつが唐突に休めば、質問攻めにあうのは間違いない。

……あぁ、憂鬱だ。

がっくりと肩を落としながら学校への道を歩いていると、さっき開いたばかりのスマホがメッセージの受信を知らせて震えた。

差出人は私を憂鬱な気分にさせたあの男。

メッセージの内容を確認すると。

「………………」

びし、と手に握るスマホが嫌な音を立てそうになる。

ここが人通りの少ない田圃道とかであれば、すぐに声を大にして叫びたい。

ふざけんな、アホ白石ーっ!! と。

何が、動けないから家に来い、だよっ!
しかも今すぐとか!
来ないとどうなるかわかってるな、とか!

「行く行かない以前に、私はお前んちを知らないんじゃーっ!」
ブー、ブー。

思わず口をついた雄叫びに、重なり合うようにして響いたバイブ音。

画面をみれば、また白石からで、なんとご丁寧に地図アプリのURLを送りつけてきた。

『家わからんいうて逃げるのナシな』

「……〜〜〜〜あぁっもうっ!」

わかったよ、わかったわよ! 行けばいいんでしょうっ、行けばっ!

理不尽な要請に応ずるべく、私は来た道を引き返し、白石の家へと向かった。




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