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カラン、コロン。
カラン、コロン。

2人分の下駄の音が夜道に響く。
近所の神社で行われている小さな夏祭り。
グレーの絣の浴衣を着た蔵に手を引かれて、お祭りの最後に打ち上げられる花火が1番綺麗に見える場所に向かう。

「……ごめんな、ひな」

こちらを向いた蔵が、唐突に眉を下げた。
謝られることなんてされてないのに、と首を傾げると、蔵は言葉を続ける。

「折角の夏休みなんに、あんま2人で出かけられんかったやろ?」

せやから、ごめん。

「そんなの、気にしないでいいのに」

しゅんと落ち込む蔵に苦笑を返す。
中々出かける機会がなかったのは、全国大会に向けた練習のため。
それはマネージャーとして一緒にいた私が1番よくわかってる。

「2人では出かけられなかったけど、みんなと海行ったりお化け屋敷行ったりしたし、」

それに何よりも。

「練習あったおかげで毎日蔵に逢えてたから、楽しかったよ」

えへへ、と笑って蔵を見上げると、私の好きな柔らかい微笑みを向けてくれる。

「それに、今こうして2人っきりで出かけられてるし」
「めっちゃ小さな夏祭りやけどな」
「小さくても蔵が一緒なら楽しいもん」
「……そか」

きゅ、と私の腕を引く蔵の手に少し力が入る。
顔を逸らす直前のほんの一瞬、彼の頬が色づいていたのは見逃さなかった。


ひゅるるる〜…………ぱんっ!


そのまま2人で足を止めていると、蔵の肩越しに夜空が爆ぜた。

「花火っ!?」
「おっと、始まってしもたか」

ちょっと急ぐで、と蔵は私の手を引いて駆け出す。

ついた先は神社の裏手にある小さな池のほとり。
境内や参道に比べて人も少ないから落ち着いて花火をみられる場所だった。

「気に入った?」
「うん」

頭を蔵に預けて夜空を眺める。
きらきらと輝く光の華が、視界の端に映る水面にも反射してとても綺麗だった。

「……なぁ、ひな」
「ん?なぁに、蔵」

私の肩を抱き抱えていた蔵の手が、頭を撫でる。
その手つきの心地好さに目を閉じながら、少し間延びした声を返す。

「これから受験で忙しなるけど、時々はこうして2人で出掛けよな」
「うん」
「んでもって、受験が終わったら、2人で色んなトコ出掛けよな」
「……うん」

当たり前のように、半年以上先のことを約束してくれる蔵に、胸がほっこりと暖かくなる。

「これからもずっと傍におってな」
「もちろん、だよ」


ひゅるるる〜…………ぱんっ!


一際大きな花火が夜空に咲き誇る中、こっそり2人でキスをした。



夏祭り
(いつまでも一緒やからな)




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