隣の×××(2/2)



「……ひなも白石と踊りたかと?」
「うん、そりゃあ、まぁ……」
私だって白石君のこと好きだし……。
そう続くはずだった言葉は口の中でごにょごにょと言う音に変わる。

「……ひなはほんなこつむぞらしかね」
白石がちっと羨ましか。

「え?」
千里君が呟いた最後の言葉が聞き取れなくて顔を上げようとしたら、唐突に頭をわしゃわしゃと撫でられた。

「で、ひなはどぎゃんすると?」
「んー……、どうしようかなぁ」
千里君からの問に私は溜息混じりにしか返せない。
「なんかもう打つ手なし?華月や体育館だと逃げ場なさそうだから隠れ場所としては適さないだろうし。かといってあのカボチャやゴーストたちに手当たり次第声かけるってのもどうかと思うし……」
「ひながまだあせんなかとこあるとよ」
私がぶつぶつと呟いていると、千里君が悪戯めいた笑顔を向けてきた。
相変わらず方言が難しい。
「?」
「まだ探してないとこあるって意味たい」
「……どこ?」
「まぁ、部室を見てみなっせ。何が見えると?」
と、聞かれても……。
私の目に映るのは仮装した女子の少し危ない集団。
「ばってん、俺には屋根の上に乗っとる猫も見えるとね」
「猫?」
「ん」
千里君がかがんで背を向ける。おぶされってことかな。
トトロの着ぐるみの背中に手を回せば、軽々と背負われる。
「あ、ホントだ」
千里君の目線で見ると、部室の屋根は丸見えで、そこで猫が気持ちよさそうに眠っていた。
「同じとこを見とっても見えてなかとこがあるとね」
私をおろして千里君。
「ありがとう!」
彼の両手をとってぶんぶんと上下に振る。
千里君の意見はものすごいヒントだ。
さすが普段から隠れ慣れているだけのことはある。
「ま、がまだすばい。応援しちゃるとよ」
もぞもぞとトトロの頭を被りなおして歩き出す千里君を見送って、早速上を見上げる。
するとすぐに、普段昼食に利用している屋上の、入り口の屋根の上に人影を発見した。
あの影はきっと――。




-11-

[ | ]

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -