隣の×××(1/2)



「言われてみれば確かにそうだよね」

校内とは学校の敷地全体を指す言葉であって、校舎だけとは限らない。四天宝寺はクラス棟をはじめ幾つかの建物が連続して繋がっているせいもあって、それだけで校内って思い込みがちだけど、校内といえばグラウンドや部室とかも指すわけで。
私は白石君が一番出没しそうな部室に向かってみた。
灯台下暗しって言葉もあるしね。あと犯人は現場に帰る!とか。

……まぁ白石君は犯人ではないけれど、やっぱり隠れるなら自分が一番知ってる場所を選ぶ可能性は高い。
私なりに推理してテニスコート脇にある少し広めのプレハブを訪れてみれば。

「うわっ……」

既に私と同じようなことを考え付く人はたくさんいたようで、部室前には仮装した女の子が山のように集まっていた。
部室の扉は、私が出るときに鍵をかけておいたから彼女たちが中に入ることはできない。
けれども諦めがつかないのか、どこかに侵入口がないかと肩車をして壁を探る人や、ピッキング(犯罪だよ、それ!)を試みてるらしき人までいる。
女子のパワー恐るべし。
「とりあえず、別のところ探そう……」
出待ち、と呼べる状況ですらないけれど、扉を開けた瞬間掴まりそうなあの場所に白石君がいるはずない。
そう判断して、来た道を戻ろうとしたら、

「おわっ!?」
「!」

なにやらもふっとしたものにぶつかった。
「すみませんっ、前よく見てな……くて」
謝ろうとして顔を上げた瞬間、固まった。

だって、そこにいたのは、葉っぱの傘を差した森の中に昔から住んでる大きなあのお化け。
……要するにトトロだ。
「すんまっせん……て、ひな?」
私よりずっと身長の高いトトロが耳慣れない方言で謝る。
やっぱり、このトトロの正体は。
「千里君か……」
四天宝寺がマンモス校といえど、校内でハロウィンの仮装にトトロをチョイスする人物は一人しか思い浮かばない。
私がマネージャーとして初めて参加した時に、遅刻してきた千里君がのたまった台詞が「トトロ探しに行ってた」だったもんね。
その時から私の中で千里君=トトロになっている。
「そげなむぞらしか格好して、なんばしよっと?」
遊園地にいる着ぐるみの要領でトトロの頭部が外されて、いつもの千里君の顔がのぞいた。
「えと……?」
とにかく自由人らしい千里君は部活にもあまり顔を出さないので(探しに行ってもいつも見つからないし)、私はまだ彼の熊本弁に慣れていない。
「あぁ、すまんちゃね。そんな可愛い格好して何しとるって意味たい」
と教えてもらえば、あぁと納得してここに至るまでの経緯を説明した。




-10-

[ | ]

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -