黄金(きん)のオオカミ



「Trick or Treat?」
逃げた先でぽふぽふと肩を叩かれて振り向くと、
「狼男?」
金の耳にぬいぐるみみたいな犬の手足(勿論これも金色)、そして更には金の尻尾のオプションをつけた謙也君。
「せや!似合うとる?」
「うん」
小物を全て髪色と合わせているから、本当に謙也君が半狼になったみたい。
「でも個人的には耳たれてたほうがよかったなぁ」
「それやったらオオカミやのうてゴールデンレトリバーになってまうがな」
なんでやねん、と謙也君が裏手でつっこむ。
でも、色合いがまさにゴールデンって感じだし、謙也君はオオカミみたいな危険な性格ではないから、そっちのほうがしっくりきそう。
彼の犬手にお菓子の袋を乗せながらそんなことを考えた。
「ね、ね。ところでさ、今日って仮装パーティーでもあるの?」
テニス部だけで騒ぐイベントにしては仮装に気合入ってるし、何よりも光君が言ってた“女子がついてくる”って言葉。まるで、学校全体でやるイベントみたい。
これまでの過程で抱いた疑問を口にすると、謙也君は掌の袋をぽろっと落とした。
「えと……もしかしてひな、知らんかった?」
「へ?」
「これや」
首を傾げる私の視界に1枚の紙が広げられる。
私の後ろからそれを差し出しているのはフランケンシュタインの格好をした銀さん。
「……今日はお坊さんのかっこうじゃないんだ?」
「宗教ちゃうからやめなはれ、と小春はんにとめられたんや」
それを指摘するなら、まず仏教系の高校でハロウィンの仮装ってどうなのさ。
……まぁ、お祭り好きな彼らにそんなこと言っても仕方ないけどね。
「それよりも、ひなはんこれ」
ホンマに知らんかったんか、と銀さんが先ほどの用紙を渡してくれる。
「なになに……『生徒会主催!ハロウィンパーティー』?」
概要に寄れば、この準備予備日はどこの団体も準備を終えているため実質無駄な日となっている。そのためそれを有効活用する目的で生徒会が慰労会という名のイベントを開く、ということらしい。
内容はお菓子コンテストやら衣装コンテスト、フィナーレには仮面舞踏会まであって、最早慰労会というよりは前夜祭だ。
「そういや、これの告知もひなが転校してくる前やったなぁ……」
知らんでもしゃあないか、と謙也君は言ってくれるけれど、これだけど派手にやるのだ。周りの騒ぎ方で気付いてもいいいじゃないか、私!
「それは無理やで、ひなはん」
「へ?」
落ち込む私に銀さんが声をかけてくれる。
「このイベントは一応生徒会がセンセらには内緒という名目で計画してはるんや」
「せや。だからみんな当日になるまではひっそりこっそり準備するんや」
告知とかも全部先生には見えないところ(例えば休み時間とか)でこっそりやるらしい。
「そんなことって……いいの?」
「まぁ、フツーはアカンのやろうけどな。なんせウチの学校はおもろければ何でもアリやから」
面白ければいいんじゃない、と先生方も黙認なんだそうで。
流石おもろいことさえすれば遅刻すらも容認される四天宝寺。
笑いとか楽しさに注ぐ情熱が半端じゃない。




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