「何を言うても驚かんで聞いてな?」

そう前置きして忍足君が叫んだ言葉に会場中が一瞬だけしんとなる。

え、え?
今、なんて……。

「お、忍足く、」

飲み込みきれない事情を忍足君に訊ねようとしたけれど、その声は一拍おいて湧きあがった歓声に掻き消されてしまった。

『キタ――――っ!バクダンオーダー!忍足謙也選手が引き当てたんオーダーは好きな人!そして下された指令は好きな人に大きな声で告白せよ!でした!』

放送が告げる解説に、目の前の忍足君の顔が赤く染まる。
そんな彼と目が合えば、私の体温も急上昇しはじめた。

どくん、どくん。

何で、こんなに脈が速くなるの。

『さて、気になる紅林さんの答えはどうなんでしょうか?』
「紅林さん、忍足君一世一代の大告白に、どうぞ答えを!」

忍足君を見つめていると、不意に脇からマイクを差し向けらえた。

「へっ!?」
『忍足君は貴女が大っ好き、らしいですが、紅林さんのお答えは!』

放送席からの声に合わせて、再びマイクがこちらに向けられる。

『えと、あの、その、』

予想もしていなかった事態に頭が上手く回らない。
そして、答えを期待する観客の視線が私と忍足君に集まっているのを感じて、余計にパニックになる。

『ご、ごめんなさいっ!失礼します!』

とにかくいち早くこの状況下から逃れたくて、マイクに向かって頭を下げて、自分の中の精一杯の速さで、グランドを走り去った。





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