「断る」
「まだ何も言うてへんわっ!」
ラブルスのように、友達に愛の告白するっちゅうパターンで俺の窮地を救える人物と言えばただひとり。白石しかおれへん。
藁をもつかむ思いで白石のもとへ向かったが、事情を話す間すら与えられずに断られた。
何でやねん!
「さっきの自分みてたら大体の事情は分かるわ。どうせオーダーに“好きな人に告白せよ”とかなんとか書いてあるんやろ?」
「……アタリや」
オーダー表を見せながら、なして分かったんかと訊ねると、「何年友達やってると思うてるんや。あの放送聞きながら謙也が考えそうなことくらい分かるわ」とありがたいようなありがたくないような答えが返される。
「その友達助けると思うて、白石!協力た、」
「それは断る」
「やからなして!」
「やって、これやと俺ら2人もラブルスと同類やったんかって誤解を招くやろ?」
「いや、白石にはひながおるやん!誰もそないなこと思わへんって」
「そのひなにまで勘違いされたら困るから言うてんねん!」
いやいやいや。
毎日暑苦しいくらい愛情表現しとる白石のことをひなが誤解するとかありえへんやろ。
そう内心でツッコミながら白石の傍におったひなを見遣ると。
「蔵?私それくらいでご、ふご」
困ってる俺を見かねたのか、渡りに船のような言葉を白石に伝えてくれようとしたが。
当の白石本人がひなの口を塞いで、続きを聞くのを阻む。
そして、彼女の耳元で何かを囁くとその手を放した。
「ごめん、謙也君。蔵は貸せない……かも」
えぇぇっ!?
さっき誤解しないて言おうとしてたやろ!?
すまなそうに頭を下げるひなに思わず内心でツッこむ。
「ほれ、ひなもこういうんやから諦めや」
「って、さっき自分ひなになんか言うたやろ!?」
「さぁ?」
あくまでとぼける白石。
どうやら何を言うても協力する気はないらしい。
……まぁ、紅白で敵味方に別れてまったからしゃあないっちゃあしゃあないんやろうけど。
それにしたって思わず叫ばずにはいられない。
「白石の薄情モンーっ!」
雄叫びを紅組3年生の控え席に残して、俺は次なる候補を探しに走った。
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