「なんや懐かしいな」
「にゃにが?」

体育祭の昼休憩。
さっきの障害物競争のせいで大勢の女子らにおっかけられて、昼飯食えへんかと思うとったら偶然日和と遭遇した。
しかもめっちゃタイミングよく弁当持っとって。まさにカモネギ(?)状態。
そんなこんなで日和と弁当つつきあっとったら、ふと俺らが小学生やった頃を思い出した。

「昔は俺んちとお前んちで一緒になって弁当食うとったやろ、学校行事ん時とか」
「あぁ、せやったね」

俺は結構コイツんちの味付けが好きで、我が家の弁当よりも水無瀬家の弁当にばかり手を伸ばしとった気がする。
……オカンには申し訳ないけど。

「オバサンの作る卵焼き、美味いよな」
「ほんま?オカンきいたら喜ぶわ」

言いながら、卵焼きに箸を伸ばして口に運ぶ。
記憶にある味と違うような気もしたが、やっぱし美味い。

「今日のもオバサン作ったん?」
「あー、今日は……」

多分オバサンが味付け変えたんやろな、と思うて何気なく訊ねると、何故か言葉を濁す日和。

「今日は?」

なんやあるんかと思うて再度訊くと、日和は数瞬無言を貫いて最後に小さく「ウチ」と答えた。

「は?」

予想外の答えに思わず訊きかえしてしもた。
やって、少なくとも小学生ン時は「家庭科は食べるの専門や!」とか豪語しとったあの日和が。

「せやから、これ、全部ウチが作ってん」
「…………ホンマに?」
「おん」

少し不貞腐れたほうな日和の答えに、俺はただいつの間に宗旨替えしたんやと驚くばかり。
まじまじと弁当と日和を見比べとる俺を窺いながら、日和が小さく「やっぱまずい……?」とうつむき加減に見上げてくる。

「……いや、まぁまぁやったで」

ホンマは昔食べた卵焼きよりも美味いと思うたけど、日和が調子に乗るやろうから敢えてホンマのことは言うてやらん。

「そか、まぁまぁ、か。よかった……」

せやけど、日和はまるで俺の考えを見通してるかのようにふわりと笑った。
その笑顔に一瞬どきりとしたのは、きっと気のせい。





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