謙也たちが、一応俺のことを心配してくれて言っているのはわかっとる。
だが、彼らの……特に謙也の様子を見ていると、どうしても湧き上がるものがある。

人の気も知らんと勝手なことばっかし言いおって。

俺の好きなコには、別に好きなやつがおんねん。
せやから、どんなに頑張っても両想いなんてありえへんのに。

「にゃぁ〜(はぁ)……」

情けない溜息が漏れた。
俺、もしかしたら一生このままかもしらん。
次の全国大会とか、受験とかまだまだ色々あるんに。

「あっ!」

先のことを不安に思いながらぽてぽてと歩いていたら、突然大声を出された。
不審に思ってそちらを見れば、コンビニのレジ袋を提げたクラスメイトの姿があった。
彼女こそ、俺が想いを寄せている来栖暁。

こざっぱりとした性格で、どちらかというとボーイッシュな印象の彼女やけど、今日の様子はちょっと違う。
それこそ猫みたいな俊敏さで俺の前に立ちはだかった来栖は、幼い少女のような笑顔を浮かべとった。

こんなデレっとした表情、学校でみたことないわ。

「にゃ、にゃぁ〜」

そのギャップに驚きながらも猫らしさを意識して鳴いてみる。
瞬間、来栖の腕ががばっと俺を抱きしめた。

「かーわーえーっ!!」

ぎゅうぎゅうと頬を摺り寄せられる。

つか、近い近い!

敏感になった嗅覚が、ふわりと彼女のシャンプーの香りを捕えて、思わずどきどきしてしまう。

そういや、以前来栖にウチの猫の写真みせたらめっちゃ喜んどったっけ……。
あの時は学校っちゅうこともあってか、ここまではしゃぎはせんかったけど、どうやら彼女は猫を前にすると性格が一変してしまうほどの猫好きやったみたいや。

「見たところ首輪もしてへんみたいやし、今日からアンタはウチのコや」
「にゃっ(はっ)!?」

彼女の腕の中から逃れようともがいとると、更に戸惑わせるようなことを宣った来栖。
びしっと音を立てて固まる俺にはお構いなしに、彼女は「お持ち帰りー」とスキップしながら、謙也んちの隣にある自宅へと入っていった。





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