「だ、大丈夫やで、白石!」

がっくし、と言わんばかりに肩を落とす俺をみて、謙也が明るい声を出す。

「ウチの学校の女子は、殆どお前のファンや!誰かに事情話して協力して貰えば、すぐに元通りやで!」
「アホか。さっき幸村が言うてたやろ、真実の愛がどうのって。白石が好きやない相手やったら意味ないやろ」

確かに、御伽噺の世界やったらそうやろうな。

「その辺どうなんだ、幸村?」

忍足ズのやり取りを受けて跡部君が尋ねる。

「うーん、今まで例を見たことがないから、何ともいえないね。ただ失敗すると元に戻れなくなる可能性もあるから、あまり冒険しないことをお勧めするよ」
「つまり、完全に恋人同士であるほうが確実というわけなんだな」
「因みに白石。現在付き合っている女性はいるのか?」

柳君の問いに首を横に振って答える。
いてたら、きっと何なく解決してたんやろうけどな。

「そうなると、こっちの手段も難しい……か」

全員が一斉に頭を抱える。

「というか白石、好きな女性はいるのか?」

先ほどと変わらずノートとシャーペンを片手に、ふと思い出したように言ってぬっと顔を近づけてくる乾君。
にやり、とした笑みに加え、きらりと光る眼鏡が少々怖い。

(な、なしてそないなこと答えなあかんねん!)

こんな大勢の前で、公開処刑もいいとこや。

「ふむ。その反応はいる……ということだな」

乾君の隣で筆を取り出した柳君も、縦書きのノートに何やらさらさらと書き込んどるし。

「白石、言っておくがこれはお前のためだぞ。例えば……といっても十中八九その可能性が高いが、お前の意中の相手が四天宝寺にいたとする。だが、猫のままでは進展も何もないだろう?四天宝寺のメンバーが間に入り、その女性に白石を元に戻すための協力を仰ぐのが、お前が人に戻る唯一の方法だと思うが」
「おぉっ!流石柳!名案やな!」

大袈裟な身振りで、謙也が拳で手を叩くものだから、肩にいた俺は、慌てて机に飛び降りる。

「さっきも言うたけど、ウチの学校の女子なら大半が白石の虜や!きっと白石が困ってる言うたらすぐに協力してくれるで!」

そして、にんまりとした笑顔を浮かべてずいっとこちらに近付いてくる。

「ちゅうわけで、」

「「「お前の好きな人って誰や((だ))?」」」


「…………にゃ(な)、」
「「「菜?」」」
「フシャアァーっ(ふざけんなーっ)!!」
「でっ!?」

1番間近にあった謙也の顔に強烈な猫パンチ(ちゅうかひっかき?)を喰らわせて、俺は謙也宅を飛び出した。





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