『劇中で白石とキスして貰うから』
木崎さんの提案に激しく動揺した来栖。
頬を真っ赤に染めて、焦っとる姿を見ると、どうしても都合のええ解釈をしたくなる。
ただ単に、キスが恥ずかしいからだけやなく、俺に対する気持ちが少しはあるからやって。
「まぁ、死角を利用してしとるフリして貰うだけやから、安心しぃ」
ニヤリ、と笑うた木崎さん。
俺から表情の見える彼女に向き合う形で座っとる来栖の顔は見えない。
来栖はどう思うたんやろ。
俺の場合は、少し残念やった。
猫化の呪い云々を抜きにしても、彼女に触れたかったから。
ほんの僅かでもええから、来栖もそう思うてくれとったらええな。
弱くなった太陽の陽射しを受けとる彼女の背中を見つめながら、そう思うた。
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