「疲れた……、ホンマもう無理や……鬼ユリめ……」

さんざん劇の特訓をさせられた帰り。
謙也に呼び止められて、珍しく玄関からお隣さんちにお邪魔したウチは、謙也の部屋でテーブルに突っ伏した。

「暁、お疲れさん。口も渇いたやろ」

悪態を吐くウチに、謙也がジュースを持ってくる。

「なんや謙也、気ぃきくなぁ」

グラスになみなみと注がれたオレンジ色。

だいぶ肌寒くなっては来たけど、水分が欲しい時はやっぱり冷たいもののほうがええ。

「ぷはーっ、生き返るぅ」
「サラリーマンのおっちゃんか」

謙也の手からグラスを奪い取るようにして、喉を鳴らしてそれを飲み干すと、間髪入れずに呆れたようなツッコミが入る。

「ええやんええやん。ウチらの仲やし。ちゅうわけで謙也、おかわり」
「へいへい。人使いの荒い幼馴染やな」

謙也は苦笑を残して階下へジュースを取りに行った。

幼馴染。

謙也の口からその単語を聞いても、前ほど胸が痛まなくなっとった。

……少しは吹っ切れたんやろか。

謙也が出てった扉を見ながら、自問する。

もし、そうやったとしたら、きっとそれは――……

その言葉の先に浮かぶ、ミルクティブラウン。
少しざわついた心の意味に、気づかないふりをした。







-46-

[]

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -