登校ラッシュを迎えた昇降口。
バス停の前で出会った奏と謙也を置いて、ひとり先にやってきた。

流石にまだ仲睦まじい2人と一緒におるんは、耐えられん。

「でも、いつかはあの2人が揃っとっても、何でもない風に振舞えるんかな……」
「何が?」
「のわっ!?」

ぼんやりとしとったら、突然背中からかかる声。

「すまん、驚かせてしもたな」

おはよーさん、と爽やかスマイルで片手を挙げるんは、白石やった。

「おはよ、しらい、」

白石の顔を見ると同時に、フラッシュバックするのは昨日の昼間。
2人で学校サボってた間のこと。

そういやウチ、白石に告白されたんやった……!

自分のことで精一杯で、すっかり忘れとったそれを思い出せば、こみ上げる羞恥心。

ちゅうか、答えとか全然考えてんし、どないすればええんや……!?

中途半端な挨拶をして、固まっとるウチは、内心めっちゃあたふたしとった。
その証拠に背中を冷や汗が伝う。

そんなウチを見透かしたように、くすり、と笑う白石の声。

「来栖」
「な、なんっ!?」
「百面相しとるで?」
「嘘っ!?」
「なんてな」
「なっ、からかったん!?」

悪戯っぽく笑う白石。

片手で殴るポーズを取れば、その手を抑えてすまんすまんと謝る。

「けど、こーでもせんと来栖、いつも通りにしてくれんやろ?」

切れ長の眦が少し寂しげに下がる。

「俺は来栖と気まずくなりたくないねん。自分が答え出す前も出してからも」
「おん、」
「せやから、難しいかもしらんけど、できるだけ今まで通りに接してや。俺も、そうするから」
「……おん」

好きな人、好きやった人と気まずくなりたくないっちゅう気持ちはようわかる。
せやから、白石の問に頷いた。


頷いたんやけども。







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