「あー……、ひどい顔」
制服に着替え、朝食を済ませ、玄関の前の鏡で顔を映すと、昨日泣きながら寝たせいか、目が腫れぼったくて、普段の3割増しで不細工になっとった。
顔洗ってもこれって、最悪や……。
謙也に会うたら、何て言い訳しよ。
否が応でも顔を合わせることになってしまう幼馴染のことを考えると、余計気分が沈んだ。
***
「「あ、」」
しかし、嫌な時には嫌なことが重なるとはよく言うたもんで、家を出た瞬間、同じく家を出たばかりの謙也と鉢合わせしてしもた。
しまった。
今日はテニス部の朝練ない日か。
「はよ、」
立ち止まる謙也の横を、俯き加減で通り過ぎる。
「お、おぅ」
気まずそうに挨拶を返して、謙也は微妙な距離を保ったままウチの後をついてくる。
「ついてこんで」
「しゃーないやろ、向かう方向一緒やねんから」
後ろを振り向かずに文句を言えば、気遣いの欠片もない返答。
せめて、一旦家入るとかしてくれればええのに。
謙也のアホ。
内心で悪態を吐きながら、普段より速足で学校に向かった。
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