「来栖、行こ」
「おん」
4時限目終了のチャイムを合図に白石から声が掛かる。
2人して弁当持って向かう先は屋上。
謙也と奏が付き合うた翌日以降続いとる、2人だけのランチタイム。
あれから、2週間。
お昼時以外でも、白石とウチだけでつるんどる時間が増えた。
元々、友達同士やったから周りからしてみれば違和感はないんやろう。
せやけど、ウチにとっては、なんか妙な感じ。
やって、白石と2人きりなんちゅうシチュエーションは、中高5年間通しても片手で数えられるほどしかあらへん。
理由は簡単。
白石とウチとの間には、いっつも謙也がおったから。
「来栖?聞いとる?」
「へ、あ!?」
ひとり、思考に耽っとると、目の前でひらひらと掌を振られる。
「ぼーっとしとるけど、大丈夫か?」
心配そうな顔で、こっちを覗き込むんは白石で。
そういや、白石と屋上でお昼食べとる最中やったんやっけ。
「だ、大丈夫や、昨日ちょっと寝不足で……」
「……考え事?」
「ちゃうちゃう、英語の予習が終わらんくて」
「ほんならええけど……。前に言うたやろ、ひとりで抱えるんやないでって。辛かったら、ちゃんと話してや」
「おん。おおきに、白石」
白石の手が、くしゃりとウチの髪を撫でる。
謙也と一緒ん時は気づかへんかったけど、白石って結構スキンシップ好きやんな。
こうして今まで友達やった白石の新たな面を知るくらいには、ウチらの距離は縮まっとるはずなんに、何やろう。
ものすごく大きなズレがどっかにあるような、不快感。
せやから、長年の友達なんに、一緒におっても、2人きりやとどうも落ち着かへん。
ウチらってこんなやったけ……。
謙也と奏だけやない。
白石との間にも妙な距離感ができてしもて。
ウチら4人の日常が、更に大きく崩れてしまいそうな、嫌な予感がした。
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