翌日。
テニス部の朝練に揃って登校してきた謙也と石蕗さん。
その様をテニス部の全員に目撃されて、揃って質問攻めにされとった。

そのせいやろか。
午前中の授業の半分が終わる頃までには、既に「あの忍足謙也にとうとう春が!」っちゅう噂が校内中を駆け巡っとって、クラス内でもからかいの的となっとった。

「よかったなぁ、謙也」
「ほんまやほんまや」
「白石の陰にずっと隠され続けとったお前にもとうとう春が」
「ヘタレにも春が」
「ええい、やかましわっ!」

好き勝手に騒ぐクラスメイトを一喝する謙也。
せやけど、周りのみんなは顔を紅潮させた謙也に構うことなく、隣におる石蕗さんにも質問を投げかける。

「なぁなぁ石蕗、これの一体どこがええん?」
「ちゅうか言うたんどっちや?」
「それよりも奏ちゃん、謙也君とはどこまでいったん?」
「えと、その……」
「だあーっ、もうっ!ええ加減散れっ、自分ら!」

男子の素朴な疑問から、女子のきわどい質問まで。
それらにおろおろしながらも恥ずかしそうに頬を染める石蕗さんと、そんな彼女を背中に庇いながら声を荒げる謙也は、付き合い始めたばかりのカップルっちゅう初々しさを辺り一面にばらまいとった。

……たく、幸せそうな姿見せつけおって。

本人らにその自覚はないんやろうけど。
からかわれとるだけやのに、2人の距離感は昨日までよりうんと近い。

「来栖、」

そんな2人の様子を傍観しとるだけの来栖が心配で声をかける。

「なん?」
「あ、いや……」

せやけど、振り返った彼女に何と言ったらいいのかわからずに、二の句が継げない。

「すまん。なんでもない」
「……変な白石」

小さく笑って、彼女は俺から視線を外す。
その笑顔は今にも泣きそうで。

それなのに、何もできひん自分自身が悔しかった。





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