「よし、これでええやろ」

翌朝。
引っ掻き傷をそのままで学校に行こうとする謙也の鼻筋に、絆創膏を貼ってやる。

「なんや、逆にカッコ悪なってへん?」
「バイ菌入って化膿するよりマシやろ。ちゅうか、謙也にゃんのすけに好かれてないんちゃう?」

今だってあのミルクティ色の姿が見当たらない。

「い、今は散歩中やねん」
「散歩!?怪我とかしたらどないするん!?」
「だ、大丈夫やっ!あいつ頭ええし」
「何でわかるんよ?」
「カンやカン!」

じとっとねめつけてやると、すぐにたじろぐ謙也。
せやけど、不意にその瞳が見開かれる。

「ちゅうか、暁」
「なん?」
「目、赤いで?どないしたん?」
「!」

普段は鈍いくせに、何でこういう時だけ気づくねん。

「あ、昨日寝ながらケータイ弄ってたからかもしれん」

咄嗟に誤魔化せば、謙也は「ふぅん」とあっさり納得してしまう。

重要なトコで鈍いんは相変わらずや。

そのことに少しほっとすると同時に、寂しさも感じた。





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