「やっぱりおらへんなぁ……」

学校帰り、近くの公園やら空き地やら、猫がおりそうなところを隈なく探してみたものの、昨日ウチに泊めたあのにゃんこらしい猫の姿はどこにもなかった。

「もうここらへんにはおらへんのやろか……」

不思議な色合いのさらさらとした毛並み。長い尻尾。
スレンダーで、猫の中でも目鼻立ちの整った別嬪さん。
如何にも猫っちゅう感じが、ウチの理想にぴったりやったのに。

はぁ、と盛大な溜息を吐くと、手前の路地から見慣れた金髪が現れた。

「謙也ー!」
「暁?」

名前を呼べばすぐに振り返るお隣さん兼幼馴染。
しかも謙也の腕の中には。

「昨日の猫!」

駆け寄って確かめると他では見かけたことない色合い。
紛れもなく昨日拾うたにゃんこやった。

「謙也が見つけてくれたん?」
「あー、まぁそんなとこやな」

何や歯切れの悪い謙也にお礼を言うのもそこそこに、にゃんこを見れば、昨日と違ってなんだかしょんぼりしとる。

「……謙也、猫いじめた?」
「なしてそうなるんっ!?俺は悪餓鬼か!?」
「違うん?」
「当たり前やっ!」

道端で落ち込んでたんを拾うたんや、という謙也にふうんと頷いて、彼の腕の中の猫を撫でる。

「おとなしウチにおらんからそうなるんよー」

頭を撫でていると耳を横にして目を細める。
そんな些細なしぐさでさえもやっぱかわええ。

「アンタさえ良かったら今日もウチ来る?」
「あ、アカン!」

猫に訊ねたのに答えが返ってきたのは謙也から。

「なしてよ。ウチのために見つけてくれたんやないの?」

身長差のある顔をじっと睨めば、謙也はうっと言葉に詰まる。

「や、拾うてみたら暁の言う通り別嬪やし、俺んちで飼いたいなぁ、と」
「それこそあかんわ。アンタんとこのイグアナちゃんと喧嘩するやんか」

猶も反論をしようとする謙也の腕の中から、ひょいっと猫を取り上げる。

「このコはウチが先にみっけたんやから、ウチのコや。はい、決まり」
「ちょ、暁……!」
「異論は受付へんでー」
「そういう問題ちゃうわっ!ええから、待てこのアホ!」
「誰がアホやっ!」
「アホやからアホ言うてんねん!ええからそいつ貸せ!」
「嫌や!」
「ええから寄越し!」
「い・や・や!」
「よこ」
「いや」
「よ」
「い」

結局猫を巡った言い争いは、ウチも謙也も引くことなく、この後小一時間ばかり続いた。





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