「う゛……」

閉じた瞼の向こうから差し込む光。
その眩しさに目を開けると、俺の左腕に頭を預けて眠る来栖のあどけない寝顔。

「――――っっっっ!!?」

思わず叫びそうになったのをなんとか飲み込んで、何度も深呼吸をする。

落ち着け、落ち着くんや、俺。
そして昨日のことを思い出せ。

確か昨日は謙也の宿題を手伝いにいって…………あぁ。

混乱する頭をなんとか働かせれば、甦る非現実的な出来事。

侑士君と乾君が開発した変な薬を飲んだせいで猫になってしもたんやった。
んで、謙也んちを飛び出した後、隣で寝息を立てとる来栖に拾われたんや。

そこまで思考を働かせてふと気づく。
猫がヒトに腕枕なんてできひんことに。

もう1度隣におる来栖のほうを見るけれど、やはり彼女の頭は俺の腕を下敷きにしとる。
確かめるために反対の腕を目の前に持ってきても、それはちゃんとヒトの手で。

元に戻っとる!?

起き上がって、窓に映る自分の姿を確認すると、そこにあったのはミルクティ色の髪をした少年。
紛れもなくヒトの俺。何がどうなったかはわからへんけど、とりあえず元に戻れた喜びに身体が震えた。
ここが他人の、それも好きな女の子の家でなければ「よっしゃ!」と声高に叫んどたとこや。
そないなことしたら、間違いなく来栖や彼女の家族が起きてきて、俺が捕まる羽目になるから叫びたい衝動を必死で抑えたけれど。

「来栖。一晩泊めてくれておおきにな」

ヒトの姿になってる以上早いトコこの部屋を出たほうが賢明やろう。
そう判断し、ぐっすり眠っとる来栖にお礼を言ってベランダに出る。
幸い、この部屋のベランダの前に大きな樹が植わっとって、これと塀を使えば玄関からやなくても出られそうや。

そして来栖の家族や近所の人らに見つからへんよう(朝も早いしよっぽど大丈夫やと思うが念のため)細心の注意を払いながら、彼女の部屋を後にして、とりあえず自宅へと向かった。





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