俺のコメントから始まった顔も分からない彼女との交流は意外にも長く続き、二ヶ月が過ぎようとしとった。

その頃には、コメントのやり取りだけじゃなくメールでのやり取りもあって、最初はただの親近感だけやった俺の気持ちも変化して、彼女は気の合う友人になっとった。

そんなある日。何気なく開けたメールを見て固まった。
あまりの衝撃で飲んでいたパック飲料を気管に入れてしまい、盛大に噎せた。

「……っ…マジ!?」

俺は彼女から告白された。
画面を見直すけれどやっぱりそうや。
見間違いやないと分かると、次に「なんで俺?」と、疑問が浮かぶ。

自分で言うのもなんだが、俺はリアルでかなりモテる。それこそファンクラブでも出来とるんちゃうかぐらい。
まぁ女子等は恐いとかゆうて近寄って来る事はあんま無いけど、それでも視線とか下駄箱や机の中にこっそり置かれたプレゼント類には正直ウンザリしとった。
そういうのが煩わしいから、わざわざ歳をごまかして、誰も俺を知らへんネット世界におるんに……。
会ったことも無い人にまで告白されるんか。


けれど何や分からんけど、そう考える自分と反対に、彼女となら付き合ってもええかもなと思う自分がおった。

「これは所謂『ネット恋愛』になるんやろか」

もし付き合うことになったら。

自分でも珍しい思いながら、彼女との進展を想像する。

彼女はどんな人やろう。

今までメールしかしとらんし、俺が進んでしんかったからかもしらんけど、互いのプライベートまで話し合う事も無かった。趣味は合うし、話すんは楽しい人や。

会おうとかなるんかな。

思いを馳せて、ふと気付いてしまった。
俺は歳をごまかしている。ネットの中の俺は『24才の社会人』。当然彼女はそう思っとる。
話すべきやろか。ホントは高校生やって。
でも話して、嫌われたり軽蔑されたりせんやろか。
いやそれ以前に。

……彼女は本気なんやろか。

会ったこともない人と簡単に彼氏彼女になれる時代。文面から真剣さは、伝わって来るけど、相手の真意までは分からへん。

でも……。

空になったパックを握り潰し、ごみ箱へ投げる。それは綺麗な弧を描き見事そこへ収まった。

俺は……。


俺の中に断るという選択肢は無かった。



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