主役の居ない誕生日(セブルス)


バチンッ

深夜。
誰も居ない、煌めく銀色の世界。
雪が降り積もったゴドリックの谷に、真っ黒な人影が突如現れた。
ざくざくと雪を踏みしめるその姿は、何処か消えてしまいそうな雰囲気が漂っている。

途中で被っていたフードが突風で脱げてしまったが、そんなのはお構い無しに影は―セブルス・スネイプ―は、歩き続けた。

そして彼の足は、とある墓地にある、白い墓石の前で漸く止まった。
悴む手で杖を取り出し、墓石を覆う雪を払った。

「…Happy Birthday,リリー」

彼の頬を伝って零れ落ちた雫は、雪の上に落ちて凍った。

「私のせいだ…私のせいで…っ、済まない、済まないリリー…っ、」

セブルスは嗚咽を漏らしながら雪の上に崩れ落ちるように膝をつき、墓石にすがった。

「私が代わりに、死ねば良かったのに…君と代われたのなら…っ」

セブルスにしがみつかれた墓石は、ただ何も言わず、静かに彼を受け止めているだけだった。
セブルスは暫く、泣きながら謝罪し続けた。








「済まない…折角の君の誕生日なのに…」

墓石からゆっくりと身体を離しながら、セブルスは呟いた。
顔は涙で濡れている。


「私に、君の誕生を祝う資格なんて無いと自覚している…。けれども、」


どうしても君を…、


セブルスは何処からともなく真っ白な百合の花を一輪取り出すと、軽く花弁に口付け、墓石の前に静かに置いた。


「Happy birthday,リリー…」

最後にもう一度だけそう言い残し、セブルスは姿くらましをした。












主役の居ない誕生日
(君がこの世界から居なくなって、14年が経ちました)








 










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