背くらべ(ルサ)
※ルサが15、6歳くらいの設定です!!
「う〜ん…」
あたしは悩んでいた。
何故?どうして?
そんな文字が頭の中をぐるぐると廻っていた。
あたしはゴロンと秘密基地の床に寝そべって、周りを見渡す。
ルビーが揃えた家具やグッズ。 …あれから年月が経ち、所々に傷が入っているものもあった。 「はぁ…」
溜め息をついて、寝返りをうとうとした、その時。
「どうしたのさ、溜め息なんかついて」 「ッルビー!?」
澄んだテノールの声に驚いて身体を起こすと、ソファー越しにルビーの姿が見えた。
「そんなに驚かなくても良いじゃないか」 クスクス笑いながらこちらへ近付いてくる。
…あぁ、やっぱり変わってしまったなぁ…
「だって…足音せんかったし…」 「あぁ、RURUにテレポートしてもらったんだ♪」
そう言うと、ルビーはボールの中のRURUに「ありがとう」とお礼を言った。
「ねぇ、ルビー」 「何?」 「背くらべしよ?」 あたしは立ち上がりながら言った。
「いいけど…何で急に?」 「…何となくったい」
そうして、あたし達は背中を合わせて立つ。 背中に感じる、ルビーの体温。 ルビーの香りが、ふわりと風に乗ってあたしの鼻をくすぐる。
そして、あたしの背は…
「…また、背ぇ伸びたと?」 「うーん…先週計った時は170だったっけ…」 背中越しに聞こえる声。
「…ずるい…」 「ん?どうしたの、サファイア?」 「ルビーばっかり、ずるいったぃ…!」 知らず知らずの内に、涙が頬を伝っていた。 「な…っ!?どうしたの、サファイア??」
振り返ったルビーは驚いた。
「グスッ…だって…っ、あたしかて…ヒグッ…大きくなりたか…強くなりたかっ!!」
「サファイア…」
グスグスと泣き続けるあたしの頭を、ルビーは優しく撫でてくれた。
暫く撫でられていると、あたしは落ち着いた。
「ルビーは…背も大きくなって、声も低くなって、強くなって…。なのにあたしは、背は少ししか伸びんし…、相変わらず弱いし…。なんか、ルビーに置いていかれた気持ちになったと…」
ダメだ。また涙が出てしまう…。
「サファイア…、キミは強いよ。」
ルビーはあたしの頭を撫でながら言う。
「ただね、サファイア。キミは勘違いしている」 「…勘違い…?」 「ボクは、キミを置いて行ってなんかいない」
彼は両手であたしの頬をそっと包み、目を合わせる。
紅い目からは逃れられなかった。
「大切な人を置いて行ったりなんか、絶対にしないし、してもいない。そこを勘違いしてもらっちゃ困る」
真剣な眼差しで、あたしの目を見ている。
「それとね、身体の成長には個人差がある。キミより背の低い男性や、ボクより背の高い女性だっている。成長する速度だって、人それぞれ。確かに、ボクら男は一般的に女性よりも背が高いし、力も強い。でも、他は?性別が違うというだけで、後はみんな同じじゃないか。それに、どの範囲が強くて、どの範囲が弱いかなんて決めるのも個人なんだ。そこに差があるのは当然でしょ?」
「うん…」
「だからさ、」
ポンポンッとあたしの頭を叩きながら、ルビーは言った。
「一緒に強くなっていこうよ、サファイア」 「え…?」 「ボクはまだまだ弱い。キミが自分のことを"強くなった"って思う時まで、いゃ、"強くなった"って思った後でも、ずっと一緒に居て、一緒に強くなるよ」
ね?と微笑みながらあたしの髪を彼は指で梳く。
「ホントに…?」 「もちろん。ずっと一緒に居るよ、サファイア」
「ありがとう…」 微笑みながら、言った。
「ふふ、やっと笑ったね」 「?」 「だってキミ、ボクが来た時から暗い顔してたからさ…、心配してたんだ。今日初めての笑顔が見れたから、安心したよ」 「心配かけてすまんち…」
そう謝ると、ルビーは優しく抱きしめてくれた。
「謝らなくてもいいよ。サファイアは悩んで苦しんでいたんだから。キミの心を少しでも軽くできるのなら、ボクでよければいつでも話を聞くよ」
「ありがとうったい、ルビー。何かあればあたしでよければ相談に乗るけん」 抱きしめ返しながら答えた。
「ふふ、その時はよろしくね、サファイア」 「こちらこそったい、ルビー」
あたし達は微笑みながら、抱きしめ合った。
背の高さなんて、抱きしめる強さなんて、関係なく。
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