視力検査2(ルサ)


「いくったぃ!」

先程ルビーがやったのと同じように、地面の印の所に立って言った。


「左」
「違ぁーう」
「右」
「また違ぁーう」
「上」
「やっと正解」

あたしがそう言うと、ルビーは近付いてきた。

「なして動きよると?」
「見えないから」
「ふーん…じゃあ、これ!」
「上」
「正解」
「下」
「違う」
「下」
「正解」
「右」
「違う」

また近付く。

「左」
「違う」
「上」
「正解」
「右」
「正解」
「右」
「違う」


また近付く。


「下」
「正解」
「右」
「正か…って、ちょっと!!」

こいつ、また近付いて来たと思ったら、抱きしめてきやがった!!
「何ばすっと!?離して!!」

もがけばもがく程、抱きしめる力は強くなる。

「例えランドルト環が見えなくても、サファイアは見えてるよ」

急に何言っとんと、コイツ?

「な…何?」
「要するに、キミが何処に行っても、必ず見つけ出すってコトさ♪」ルビーはあたしの顎を上へ向けて、

「大好きだよ、サファイア」

と言いながら、顔を近付けてきた。


互いの唇の距離が、縮まる。


3センチ…


1.5センチ…


そして…








ガツァァァンッッ!!!!
「いっ…たぁぁぁぁあっっ!!!!」

あたしの頭突きが、見事ルビーのおでこに命中した。

「キャハハハッ!!いつも通りにいくと思ったったぃか!?」

あたしはげらげらと笑いながら、またもやうずくまっているルビーを見て、またもやしてやったり、と思った。

「…ったぁ…」

「フフッ♪油断大敵ったぃ、ルビー!!」

あたしは勝ち誇ったように言っ「キミもね、サファイア…」


え…?


ドサリ、とあたしの身体が地面に倒れた。


え…??
今何されたと…??
あれ??
なんか、物凄い笑顔のルビーがあたしを上から押さえつけとんのやけど…。

ずぃっとルビーの顔がアップになる。


「こんな簡単に足払われたら、すぐに襲われちゃうよ??」
にこり、と笑いながら言った。

ヤバい…ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…っ!!!!

ルビーの笑顔とは対照に、あたしは全身に冷や汗をかいていた。

「え…、ちょ、待って!待つったい、ルビー!!」

「ん〜?あれ、聞こえないなぁ…。やっぱり鼓膜破れてたのかなぁ…??」

笑顔のままそう言って、ルビーはあたしの耳元に唇を近付け、

「そうだ、まずは…」
「っ!?」
わざと息がかかるようにルビーは囁いた。


チクリ、と首筋に痛みが走る。

「ボクのモノだっていう印(マーク)を付けておかなきゃね♪」
「な…っ!?」


ヤバい、襲われる…!!!!


「それじゃ、いただきます♪」

そう言うと、ルビーはあたしの上着のボタンに手をかけた。



あたしの人生最大の悲鳴が森中に響き渡ったのは、その後すぐのこと。











*****おまけ*****************

「はぁ…っ、はぁ…っ」


あの後…、ルビーが上着に手をかけた瞬間、人生最大の悲鳴を上げながらあたしは、渾身の力を込めて奴の…男の一番の急所を膝で蹴り上げ、顔から血の気が引いて悶絶している奴を置き去りにし、全速力で秘密基地から逃げ出した。



その後数日間、ルビーは変な体制で歩くことを余儀なくされたが、あたしの知ったこっちゃない。


 










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