Envy(ルビー&カガリ←サファイア)


気にくわん…


ルビーのコンテストに付いて来た(無理矢理ルビーに来させられた)あたし。

コンテストも終了し、観客達はあれが綺麗だった、これがよかったなどと騒ぎながら会場を後にしている。

あたしは、ルビーが控室から出て来るのをロビーで待っていた。

けれども、一行に来る気配がない。
あたしのいかりのボルテージが上がっていく。

「アイツはいつまで待たせるとね…!!」


痺れを切らしたあたしは、ルビーの控室へと向かった。









薄暗い廊下を歩き、ルビーの控室にたどり着く。
ドアが少し開いていて、そこから光が漏れていた。
ドアを開けようとして、手を伸ばした瞬間。


「…〜なんですよ、…」

誰かが話している声が、聞こえた。


ルビーと…、誰…?

目を閉じて声に集中する。

「…さんも出れば良かったのに…」
「いゃ、あたしはまだまだ準備中だからね」

聞き覚えがある声。

誰やったっけ…。


「ところでカガリさん、今日はどうしたんですか?」

カガリ…!?
元マグマ団幹部の…!?

うそ…

あたしはギリッと唇を噛んだ。

「今日はな、ほれっ」

ガサッと音がした。
カガリ…さんがルビーに何か渡したのだろう。

「Wow!!チイラにリュガ、サンにスター…そしてレンブの実じゃないですか!!どうしたんですか、こんなに珍しい木の実…」
「あたしが育てたのさ。ちょっと作り過ぎちゃったからね…やるよ」
「ホントですか!?ありがとうございます、カガリさん!!」

嬉しそうなルビー…
あたしと居る時は、滅多にはしゃがんのに…

ギュッと握りしめた手の平が、痛かった。

どろり、とどす黒い感情があたしを飲み込む。


「さてと…。そこに居るのは分かってんだよ、出てきな」

ビクッと肩が震えた。

気付かれていた。
いつから?
悔しい…。
泣きそうになりながら、あたしは控室の扉を開けた。

「サファイア!?」

ルビーはあたしを見てビックリしていた。

「どうしてここに…」
「いつまで待っても…あんたが来んかったけ…。…迎えに来たとよ」
「あ…」
チラリとルビーは時計を見て、青ざめた。

「ご…ごめん、サファイア!!久しぶりにカガリさんと会ったから、つい話しこんじゃって…!!」


「よか…」

「それじゃ、あたしはここら辺でおいとまするよ」

そう言って、カガリさんはあたしに近づいてきた。

「あの時は済まなかったねぃ、サファイア。まぁそんなに妬くなよ。これからも不器用なアイツを見守ってやんな、その純粋な心でね」

クシャッとあたしの頭を撫でながら、カガリさんは囁いた。

「それじゃ、またな!」
「はぃ!!今日はありがとうございました、カガリさん!!」


バタン、と扉が閉まった。

沈黙が辺りを包み込む。


「あのさ、サファイア」

「…何ね?」

あたしは床を見つめたまま答える。

「その…。待たせてしまって…ごめん」

「もうよか、気にしとらんけ」

「嘘、サファイア怒ってるじゃん」
「…怒ってなか」
「怒ってる」
「怒ってなか!!」

バッと顔をあげて、あたしはルビーを睨みつけた。

こんなことしたって、意味無いのに…


「…じゃあ何でそんなにカリカリしてるのさ?」
「それは…っ!!」

単なるヤキモチ。

そんな理由、恥ずかしくて言えない。

「もしかして、ボクがカガリさんと一緒にいて…妬いた?」
「!!」

図星だ…
恥ずかしくて死にそう…

「ふふっ」
「な…なして笑うと!?」

あたしは恥ずかしさで赤面しながら叫んだ。

「いやぁ…。ヤキモチ妬いたサファイアがあんまりにも可愛くってさ、つい」
「…っ!!」

何も言えない。
俯いたあたしの頭を、ポンポンッとルビーが叩いた。

「ボクはサファイア以外の女性には興味無いから、心配しなくてもいいよ。じゃ、帰ろっか!」

そう言って、ルビーはあたしの手を取って部屋を出た。


自然と、心が温かくなるのを感じた。

ギュッと、ルビーと繋いだ手を握り返す。



さっきのどす黒い感情は、いつの間にか薄暗い廊下に消えていった。




 










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