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標的12




暑い夏といえば、学生にとって最高の行事夏休み。長い長い休みだからこそ行ける遠出もいいし、バイト三昧なんかもいいし、1日ぐうたらするのもまた良い。さあ、これから夏休みだ、と意気込んでいた者のうち数名は、地獄の始まりだ。



「夏休みだってのに…テスト悪かったから補習ばっかりだよ」


ツナを含めテスト成績が悪かった者は夏休みほぼ補習という、なんともツラい夏休みとなってしまっていた。



『やっぱり、普段から勉強はしなきゃだね』

「うん…そうだね…」

『京子や花ちゃんに言われてるんだけど、やる気でないんだよね』



困り顔で言った殊夏に激しく同意した。その時、先生が最悪な事を口にした。



「このプリントは明日までの宿題です。全問正解しなくちゃ落第ですからね」

「『!』」



話していた二人はばっと先生を見た。普段人が多い教室なら、ここで沢山の抗議の声があがるのだが…。



「(少人数は弱い〜〜〜〜っ)」

「では終わります」



十人にも満たない人数が抗議しても、なんの効果もなかった。



「(なんなんだよ〜補習に宿題って今日休めないじゃんーっ)」

「殊夏、ツナ」

「!」



終わっても机で頭を抱えていたツナへと山本が歩み寄る。



「早速宿題でちまったな。みんなで集まって宿題やんね?」

『するー…絶対終わらないもん…』

「それいーね!どこでやろっか?」

「うちでやればいいだろ」



この場にいないはずのリボーンの声にぎょっとしてまさかと見れば、机にアイスを持ったリボーンがいた。



「おまえ教室に出没すんなよ!!」

「ちゃおっス」

「よお小僧元気そーだな!」

「ってゆーか何でお前がオレ達が宿題やる場所決めてんだよ!」

「オレはおまえの家庭教師だからな」

「おっ、おい――――っ」



殊夏にはすでにバレているが、山本はツナの家庭教師がリボーンだとは知らない。年下、それも赤ん坊が中学生の自分の家庭教師なんてバカすぎる。しかし、ツナの心配は全くの無駄だった。



「ハハハハ。そっか、ツナおまえいい家庭教師つけてんな―――っ」

「(山本また冗談だと思ってるー!)」



笑いながら山本はリボーンを抱き抱えると肩にのせた。



「オレも宿題みてくんねーか?菓子ぐらいおごるぜ」

「いいぞ」

「なっ!?」

「でも簡単に教えたらおまえ達のためになんねーぞ。オレはひと通りできるまで口出ししねーからな」

「言うね―――おまえ!!やっぱいいわこいつ〜〜〜!」

「ちょっ、マジでうちでやんの〜!!?」

『ごめんねツナ君。お邪魔するね』

「あっ…う、ううん!気にしないで」



沢田家で宿題決定。



◇◆◇◆◇



――――ピーンポーン



「はーい!」



リボーンに大人しくしているようツナが言っていた時チャイムが鳴ったので、玄関まで行きドアを開けたツナは驚愕した。



「「『おじゃましまーす!』」」

「な!(なんで獄寺君がいるの〜〜〜〜!?)」



ドアの前には差し入れを持った山本と殊夏、そして獄寺がいた。



「考えてみたらわかるやつがいねーとおわんねーだろ?」

『だから、頭がいい獄寺君を誘ってみたんだ』

「獄寺がいたら百人力だぜ」

「よせやい」



二人に同時に誉められ、照れながらも満更でもなさそうな獄寺。



「(た…たしかに…獄寺君って怖いけど…ベンキョーはできるもんな…)」



獄寺のおかげで簡単に終わるかもしれないと、ツナは期待した。そして始まった宿題会。



「そんでもってこーなるワケです」

「獄寺おまえさっきからよー」



教えていた獄寺に山本が言った。



「教科書読んでるだけじゃん」

「なっ」



誰もが思っていたことをあっさりと言った山本。それに黙ってはいなかった獄寺はドンッと机を叩いて山本を鬼の形相で睨んだ。



「てっ、てめ―――っ。なめてっとブッ殺すゾ!!!ここに解き方は全部のってんだよ!!」

「うんうんそーなのな」



なんてことないように笑いながら山本は言うと、プリントを見せた。



「おかげで大体解けたぜ」

『私も』

「ええ?」

「見せてみろ!!」



二人がプリントを渡すと両方を獄寺はひったくって見た。しばらくじっと見ていた獄寺は、ちっと舌打ちしたあと、ボソッと小さな声で言った。



「あってる」

「(スゲー山本も殊夏も…二人共部活が忙しいだけでやればできちゃうんだー!!)」



なんだか補習仲間と思えなくなってきたツナだった。



「つっても、オレもコイツも問7はさっぱりわかんなかったけどな」

「!ガッハッハ。まだまだバカだな山本ォ!」

「……獄寺君…」

『そんな嬉しそうに…』

「問7はなー…」



プリントを見ていた獄寺の顔が、見る見るうちに強ばっていった。そして、やがて呟いた。



「…………わかんねえ…」

「え!?」

『ご、獄寺君でもわからないの?』

「まじーな。全部解けなきゃ落第だったっけ?」



困り顔で山本が言えば獄寺は過剰に反応しさっきとは比べものにならない勢いで机を叩いた。



「な…なに――――!!?なんでそれを早く言わねーっ!!」

「ひいっ」

『ま、まーまー。まだ時間はあるしさ』

「そーだぜ。力を合わせて考えよーや」

「ったりめーだ!10代目を落第させるわけにはいかね―――っ!!」

「ハハ…」



それから数十分後…。



「うーん…」



誰も答えはわからなかった。



「このくそ暑いのにおまえ達むさくるしーぞ」



え?と声の方を振り返る。



「いっそのことガマン大会やれ」

「暑つ!!!」



真冬のような格好をし、コタツにミカンに熱々鍋、傍らには餅を焼くといった夏真っ盛りとは思えない状態のリボーンがいた。どーりで部屋が熱気に包まれているわけだと四人は納得した。



「何やってんだよ!!悪魔かおまえは!」

「オレじゃねーぞ」

「おまえ以外に誰がこんなこと……!」

「ハルは悪魔じゃ…ありません…」

「ハル!!!」



気配を感じドアの方を見ると、テンションがた落ちのハルがユラー…と現れた。



「ツナさんが宿題がんばってるって聞いて…気分転換にと思ったんです…」

「(気分転換にガマン大会…って、ならないだろふつう!!)」



ごもっとも。



「つーか何で勝手にあげたんだよ〜っ」

「マフィアってのは女を大事にするんだぞ。好いてくれた女は大切にあつかえ」

「な!もとはと言えばおまえのこと好きだったんだぞ!」

「いいのリボーンちゃん……ハル帰りますから……」

「え」



帰ると言ったハルに視線を向けるツナ。



「ただ……ハルは悪魔じゃ…ありませんから…」



暗い空気を背負って去っていったハルだったがその場の空気は…。



「「『(空気おも〜〜〜っ)』」」



山本もどーしたもんかと頭をかいてしまう程だった。



「もてんなーツナ。どーやって知り合ったんだよあんな名門の子と」

「え?名門?」

『うん…前は制服じゃなかったからわかんなかったけど、あれ緑中の制服だった』

「このへんじゃ超難関のエリート女子中だぜ」

「ヘ〜〜〜あのアホ女がねえ」

「ハル頭いいんだ――――」



意外なことがわかったが、獄寺同様バカと天才は紙一重なハルだった。



「この問7も楽勝だったりしてな」



山本の言葉にツナも獄寺も殊夏も反応した。



「ちょっとオレ、ハルに聞いてくる!」



と慌ててプリントを片手に廊下に飛び出したツナ……だったが、ハルは壁に耳をつけてまだその場にいた。



「はひ――――」

「な(盗み聞きしてやがるー!!!)」



まさかのことにドン引きしたツナだった。



「問7ですね」



とりあえず解けるならなんでもいい、とツナはハルにプリントを見せた。



「これ習いました。わかると思います」



その言葉と笑顔に四人はおお―――っと歓声をあげた。ちなみにリボーンはスイカを食っていた。


◇5分後◇



「あとちょっとです」



リボーンスイカ完食。


◆10分後◆



「もうちょっとです」



リボーン武器磨き。


◇一時間後◇



「みえてきました」



リボーン寝間着に着替える。


◆3時間後◆



「ごめんなさい!わかりませんー!!!」

「「「『(なに―――!?)』」」」



リボーン就寝。

ハルの言葉に四人は目の前が真っ暗になっていた。



「てめ――――――っ。わかんねーならハナっから見栄切んじゃねー!!」

「解ける気がしたんです……」

『それで3時間…』

「やばいよ夜になっちゃったよ!!」



さすがの山本も笑顔がひきつっていた。その時、部屋の窓がガラッと開けられた。



「君はだれだい?僕はランボ♪僕はだれだい?君はランボ♪」



窓からバカみたいな歌を歌いながら入ってきたのはランボだった。



「〜〜〜〜〜♪…!!」



中を改めてみたランボはビクッと顔を青ざめた。



「(このイラついてるときに)」

『(ますますイラつかせるようなのが)』

「(でてくんじゃね――――!!!)」



と、三人から思いっきり睨まれたランボ。



「お…おれっち通りかかっただけだよ」



冷や汗を流しながらランボはガマン大会とハルが用意したコタツの鍋を開けた。



「今日は何?げ…キムチか…」

「メシ食いにくんな!!」

「わーこの子微妙にカワイイ〜」

「おい!おまえ達!宿題のじゃまするなら帰ってくれよ!」

「すっ…すみません…」



ツナに一喝されハルは大人しくなったがランボは構わずキムチ鍋を食っていた。



「まーまー落ちつけってツナ・獄寺・殊夏も」

『でも、誰も問7わかんないんだよ…?』

「とはいえ中一の問題だぜ―――。大人に聞きゃ――――わかんだろ?」

「大人?」

『うーん…』

「大人っていったら……」



はっ、と三人は一斉にランボを見た。



「「『(大人ランボ(くん!!?)』」」



が、すぐにその考えに×をつけた。



「(いや…アイツはバカだ…)」

「(アイツアホだしな〜)」

『(大人でもランボくんだし…)』



その時ああ!とハルが手を挙げた。



「この問題解けそーな大人の女性知ってます!!」

「まじ!?」



微かな希望に四人の目が輝いた。



「はい。この前一緒におでん食べたんですけど」



言いながらハルは電話をかけ始めた。



「すっごい美人で趣味は料理なんですよ〜!」

「スゲー完璧!」

「女の中の女だな」

『憧れるなぁ』



と、言っていたが、それはすぐさま頭の中から抹消された。



「あ、もしもしビアンキさん?」

「なっ!!!!」

『ビアンキさん!!?』

「え゛――――!!!!」



まさかの名前にツナ・獄寺・殊夏はハルに待ったをかける。



「ま、まて――――!!!」

「ビアンキは呼ばなくていい!」

『ハルちゃん断って!!!』

「はい?」



――――チリンチリーン



「(ビクッ!)」

「『速っ!!!』」

「ちょうど通りかかった所みたいです」



すると獄寺は部屋を飛び出した。



「獄寺君!」



必死の形相で階段を滑るように駆け下りると一直線に玄関まで向かった。



「おじゃましま…」



――――バタァンッ

そこからの獄寺は鮮やかだった。開きかけたドアを閉めると、鮮やかに鍵をかけチェーンをし終えた。それを追いかけてきて見た殊夏は、人間必死になるとここまで出来るのか、とちょっと感動していた。



「う、少し…見ちまった……」



その時外からビアンキの声が聞こえてきた。



《その照れ方は隼人ね。私は問7を解きにきただけなの。あなたは姉を異性として意識しすぎよ》

「『(ちげーよ!!)』」



まさかそう思っていたとは、と二人はガーン、と衝撃を受けた。



《…………仕方ない子ね。ポイズンクッキング、溶解さくらもち》



その声の直後、ドアノブが煙をあげながらドロドロに溶けていった。ぎょっとしているのも束の間、バッとビアンキの手によってドアは開けられ、獄寺はその姿を見た。



「うぎゃああああっ!!」



気絶した獄寺はとりあえずベッドに休ませ、ビアンキに問7を見せるツナ達。



「どうビアンキ…わかる?」

「そうね…」



じっと見ていたビアンキはツナから借りたプリントをテーブルに置くと、殊夏からプリントを奪った。



「こんなものどーでもいいわ」



と言うと真っ二つに破いた。



「『んな――――っ!!やぶいた――――!!!』」

「大事なのは愛よ」



ガガーンッとショックを受けながら言う二人にビアンキは言うとさらに破いていく。



『どーでもよくないですよっ!なんでわざわざ私のに変えてまで破くんですか!?落第かかってるんですよ――!!私のプリント――――!!』

「殊夏おちついて!」

「そーだぜ!オレのコピーしてやっから!!」



心なしかスッキリした顔をしながら破いていくビアンキに飛びかかろうとする殊夏を、ツナと山本が苦笑いしながら止める。

――――ガチャ



「返事がないのであがらせてもらったよ」



ん?と声がしたドアの方を一斉に見る。そこにはメガネをかけた見知らぬ男性がいた。



「どれだね?ハル。わからない問題というのは」

「『?』」

「だ…誰?」

「これよお父さん」



疑問符だらけのツナ達とは対照的に笑顔でその男性をお父さんと呼んでプリントを見せたハル。



「あ、うちの父大学で数学を教えてるんです。だから呼んじゃいました」

「なんで最初に言わないんだよ〜〜〜〜〜〜!!最強の助っ人じゃないか!」



嬉しそうに言うツナの後ろでは、ハルの父親がプリントを見る。



「ふんふん。これは確かに超大学レベルだが私にかかれば解けなくはない」



てゆーかなんで中一の問題に超大学レベルの問題が?とこの場の者全員が思ったがそこはスルー。



「答えは3だよ」

「いいや4だぞ」



え、と全員が声の主、寝ていたはずのハンモックの上のリボーンを見た。



「おまえネコジャラシの公式ミスってるぞ。答えは4だ」

「な!なに言ってんだよリボーン!相手は大学教授だぞ!」

「んん…?あのモミアゲ…どこかで…」



じっとリボーンを見ていたハルの父親は、リボーンのくりん、としたモミアゲを見てはっとした。



「ああ!思い出したぞ!あなたは天才数学者のボリーン博士じゃありませんか!!」



驚いたように言ったハルの父親の言葉に、リボーンはニッと笑い返した。



「はぁ――――!?何言ってるんですか〜?」

「お父さん?」

「まちがいない!」



言うとハルの父親はツナ達にカバンから取り出した資料を見せた。



「彼こそ学界に時おり現れて不可能と言われてきた問題をことごとく解いていく、幻の天才数学者ボリーン博士その人だ!!」

『あっ…リボーンくん?』

「確かに似ちゃーいるけど人ちがいだと…」

「いいや、その証拠に私はまちがっていたよ。答えは4だ」

「え…!」



ええ――――――っ!!!!



「おまえマジで数学者とかやってんの〜!?」

「リボーンちゃんすごい!」

『…あれ?寝ちゃってる?』

「んな!」

「ハハハ。こりゃ全部寝言だな。考えてみろよ、こいつまだ赤ん坊だぜ」

「え゛…」

「世の中に似た奴なんてゴロゴロいるしな」

「そっ、そーだよね!!なわけないよね!」

『う、うん。ちょっと有り得ない、かな…』



そういいつつも、リボーンに一流家庭教師を感じずにはいられないツナと殊夏だった。




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