標的11
「ふ〜っ、暑い……――――」
橋の上をのんびりと歩いていたツナの肩をポン、と誰かが叩いた。
『おはよーツナ君』
「殊夏!」
振り返ってみれば、それは隣人の殊夏だった。
「…あ、今日は髪結んでるんだね」
いつもはおろしていた髪を、今日はツインテールにしていた殊夏ははにかみながら答える。
『うん。今日は暑いから結んでみたの』
「ほんと今日は暑いよね」
その時二人の背後からガシャンガシャンと音がした。
「あまりの暑さに耳なりも…」
『え、ツナ君も?』
「え?」
――――ガシャン、ガシャン…
「『(耳なりじゃ…ない?)』」
あれ?と二人して振り返ってみれば、そこには鎧に身を包みゴルフクラブとヘルメットを手にしたツナ達ほどの少女がいた。
「おはよ――――ございます」
「あんた何――――!!?」
「昨日頭がぐるぐるしちゃって眠れなかったハルですよ」
「寝不足だとそーゆーかっこうしちゃうわけ!!?」
「ちがいますーっ。それじゃ私おバカですよ」
どっちみちそんな鎧を着てる時点でちょっとおかしい。
『ツナ君、知り合い?』
「知り合いっていうかなんていうか…」
「ハルはリボーンちゃんを救うために来たんです」
「ちょっと昨日いろいろあって…」
疑問符だらけの殊夏に構わずハルという少女は続ける。
「リボーンちゃんが本物の殺し屋なら、本物のマフィアのボスになるツナさんはとーってもストロングだと思うわけです」
「な?」
驚くツナだが、まあ一理ある。
「ツナさんが強かったらリボーンちゃんの言ったことも信じますし、リボーンちゃんの生き方に文句は言いません」
言うとハルはヘルメットをかぶりゴルフクラブを構えた。
「お手あわせ願います!」
「んな―――――!!?」
狼狽えるツナだったがハルは容赦なくゴルフクラブを振り下ろしてきた。
「あちょー!」
「うわっ、ちょ、まてよ!」
『ツナ君!』
突然始まった攻防に殊夏はどうしようかと狼狽える。
「くそったれぇ!!」
『!獄寺君』
ツナに気づいた獄寺が、ハルに襲われているツナを助けるべくやってきた。
「オレはマフィアのボスなんかにはならないんだって!」
「じゃあやっぱりリボーンちゃんをもてあそんでるんですね!!」
「そーじゃなくて…!」
『(すごい…見事に話が通じてない)』
ある意味すごいな、と殊夏が見ていると、向こうから走ってきた獄寺がツナの前へと出た。
「10代目、さがってください!」
「え?ごっ、獄寺君…!!」
「へ?」
「果てろ」
獄寺がハルにダイナマイトを投げた。
「あれ?ドカーンってやつですねー」
なんて、呑気に降ってくるダイナマイトを見ながら言っていたハルがん?どかーん?と思った瞬間。
――――ドガァン!!!
「はひ――――っ!!!」
爆発し、ハルは川へと落ちた。げ、とツナと殊夏は橋に手をかけ身を乗り出し川を見る。
「あ〜〜〜〜〜〜〜あ落ちちゃったよ!」
「これでもう大丈夫です」
『大丈夫じゃないよ!?』
フーッとタバコを吸いながら言った獄寺にガンッとショックを受けながら殊夏が言っていると、川面からハルが顔を出す。
「ブハッ。なんであんなもん持ってるんですかーっ」
確かに普通(?)の人ならそう思うだろう。
「!(ヨロイが…重くて…泳げない…!)」
泳ごうとしているがその場でバシャバシャしているだけのハルに疑問符を浮かべるツナ。
「どうしたんだ?」
『……あれ、ヨロイのせいで泳げないんじゃ…』
「ええっ!?」
その時、殊夏の言葉を肯定するような叫びが聞こえてきた。
「たすけ…ゴボッ、たすけてぇーっ!!」
「や…やばいよ!」
「ん?」
『大変!助けないと…』
「助けてやる」
え、と四人は橋の手すりを見る。
「リボーン!!」
そこにはいつの間にかリボーンが立っていた。
「だめです!この川はリボーンちゃんが泳げるよーな…」
いや、きっと泳げる。水泳選手顔負けなくらい、と密かに殊夏は思った。しかしリボーンの実態を知らないハルは、リボーンの助ける発言に慌てて止める。そして溺れながらも橋の上を見たハルは、え!と驚いた。
「(リボーンちゃん?)」
橋の上では、リボーンがツナに銃口を向けていた。
「(何やってるんですか?)」
様子を伺っていると、辺りに銃声が響き橋の上からツナが降ってきた。
「え゛え゛え゛え゛っ!!?」
死ぬ気弾をを撃たれたのだが、そんなこと知らないハルはぎょっとした。
「死ぬ気でハルを救う!!!」
「はひ!?」
そしてなぜか撃たれたはずの男が今度はパンツ一丁になってこちらに来るかのだからハルには何がなんだかさっぱりだった。その時リボーンが「追加だ」とカカトに足スクリュー弾を撃った。その瞬間ツナの泳ぎは魚顔負けの猛スピードのフォームを見せハルのもとへと泳ぎ始めた。
「オレにつかまれ――――っ!!!」
そしてハルはツナに抱えられなんとか死なずにすんだのだった。
河原に運ばれたハルに殊夏は体育の着替えを貸し、ツナと二人にタオルを差し出した。そしてハルは体育座り中。
「ありがとーございました…」
「ったく、反省してんのか?10代目にもしものことがあったら、おめーこの世に存在しねーんだからな」
「…………プ」
「『!?』」
いきなり吹き出したハルに、三人はなんだ?と反応する。
「死ぬ気でハルを救う!オレにつかまれーっ」
「「『!』」」
立ち上がったかと思えば先程のツナの真似をしだしたハルに三人は引いた。とうとう壊れたのかと若干心配までする三人にハルは素敵な笑顔を浮かべた。
「そんなクサイセリフ、テレビの中だけだと思ってました」
「(反省してね――――っ)」
まさかのハルの態度に衝撃を受けたツナ。
「向こう岸まで泳ぐ――――っ」
「ちょっ、やめてよ!はずかし――――っ」
ツナが止めると、ハルは頬を染めながらツナをうっとりと見つめた。
「すごく…ステキでしたよ。リボーンちゃんのかわりに飛び込んでくれた10・代・目∨」
「な!!」
『ええっ!?』
「(ニッ)」
ツナと殊夏は驚愕し、リボーンはニッと笑っていた。
「さっきからドキドキして、ムネが…っ」
「ちょっ、はあ!?」
「ハルはツナさんに惚れたもようです」
「『んな゛――――!!』」
爆弾発言に喜ぶどころか叫んだツナ。殊夏も思わず叫んでしまった。
「(なんだ…このアホ女…)」
獄寺にいたっては言葉も出ないほど呆れていた。
「でも確かリボーンのことが好きなんだろ?」
「今はツナさんにギュッとしてもらいたい気分です」
「え――――――!!?」
それから追いかけてくるハルから殊夏の前でそんなこと出来るかと思いながら必死に逃げるツナを、獄寺と二人見ていた殊夏。
『……ツナ君、モテるんだね』
「はっ。なに当たり前のことを言ってんだ。10代目なんだから当たり前だろ」
それは理由になるのだろうか。まあ、この日はハルという個性的な女子友が出来たツナだった。
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