標的13
買い物帰りに沢田家の前を通りがかった殊夏の視界に、一人の少年が座り込んでいる姿が入った。
『こんにちは』
「え?」
後ろから話しかけると、少年は不思議そうに顔を上げる。
『こんな所で何してるの?』
「え、あの…まともな人?」
少年…入江正一の言葉にきょとんとした殊夏だったが、すぐにあっと笑顔を浮かべた。
『もしかしてツナ君のお友達?』
「ツナ…?」
正一の表情にまたきょとんとした殊夏。
『違うの?』
「いや…リボーンさんに…」
『え゛。まさか…マフィアの…関係者、ですか?』
引きつりながら慌てて敬語になる殊夏に、今度は正一がきょとんとする番だった。それに殊夏ははっとすると慌てて笑顔で手を振った。
『ごめんね。違うならいいの、気にしないで…』』
「逃げろランボ!!」
え?と声がして二人同時に見れば、なぜか浴衣姿の大人ランボがなぜか水着姿のビアンキに追いかけられていた。ビアンキの手にはポイズンクッキングがあり、地獄の鬼ごっこだと瞬時に殊夏は悟った。
「殺す」
そう言って殊夏たちに見向きもせず去っていったビアンキ。そして青ざめた顔で正一は呟いた。
「母さん…やな予感がする…」
『ツナ君!』
殊夏は庭へといたツナ達に気づき近づいた。
「殊夏!」
「ちゃおっス」
『ビアンキさんに説明したんじゃ…』
追いかけられているランボを指差しながら殊夏が言うと、ツナは青ざめながらひきつった顔をした。
「なんか…やっぱ無理みたい」
『え゛』
その時、ビアンキ達から銃声音。
「!」
それはランボに当たることなく壁に弾かれ
「!!!」
座り込んでいた正一の頬を掠め
「な、え!?」
最終的になぜかツナの足元に弾丸は放たれた。それからも弾丸がそこら中に飛んでくる。慌てふためくツナと殊夏になぜかまったく弾丸を掠めないリボーンが言う。
「ビアンキの射撃の腕は最悪だからな。どこに飛んでくるかわかんないぞ」
「『んな―――――!!!』」
最悪のパターンだ。
「リボーンなんとかしろよ!!このままじゃ死人がでるぞ!!」
「ツナが何とかすればいいだろ?」
「!」
言ってリボーンはツナに銃口を向けた。
『あ…死ぬ気弾?』
「ちょ、ま、まて!」
――――ズガン
ツナの制止も虚しく、銃弾は放たれ、ツナの体は撃たれた衝撃で塀の外へと出てしまった。
「復活(リ・ボーン)!!死ぬ気でケンカを止めるー!!」
塀の外から聞こえてきたツナの声。
『でも、一体どうやってケンカを止めるの?』
「戦闘をやめさせる極意は、戦意を喪失させることだぞ。覚えておけ殊夏」
『う、うん…』
「両ほっぺを撃って」
え、ほっぺ?と道の角へと移動しながらどうなるのだろうとリボーンが撃った先のツナを見る。
「にらめっこ弾」
ほっぺだけが何倍にも膨れ上がったツナにぎょっとした殊夏。殊夏からはビアンキしか見えなかったが、その場にいた正一は気絶。
「ん?」
「…」
ツナを見たビアンキは
「ムカツク」
「ん―――――!!!」
と一言吐いてツナの口にポイズンクッキングを突っ込んだ。喰らったツナはその場に倒れた。
「ビアンキにはきかねーな」
「『……』」
なんとか逃げ切ったランボと二人、殊夏は顔を青ざめて改めてビアンキ(ポイズンクッキング)の恐ろしさを痛感した。
そしてこの時、殊夏は入江正一の存在を忘れていた。名前すらも聞いてない、通りすがりの少年…その存在と、近く遠い未来にまた出会うことを、誰も知らない。
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