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標的10




「殊夏ちゃん、庭の掃き掃除ご苦労様」

『いえ』

「気をつけて帰るんだよ」



知り合いのよしみで殊夏は神社で1日アルバイトをしていた。神主から給料としてスイカを2つももらった殊夏だったが、これらをどう運ぶかで途方に暮れる。



『どーしよ…あれ?』



道の向こうから獄寺が走ってくるのが見えた。話しかけようとした殊夏だったが獄寺は木に寄りかかり具合が悪そうだった。



『どーしたんだろ…』



スイカをその場に置いて走り寄った殊夏。



『獄寺君』

「!殊夏…」



ゼーハーと体全体で息をする獄寺は、現れた殊夏に最初こそ驚いたがすぐにまた顔色悪そうに俯いた。



『ど、どうしたの?どっか具合でも…』

「獄寺君…」

『あ、ツナ君』

「殊夏!」



獄寺の跡を追ってきたツナは、その場に殊夏がいたことに驚いたが、それよりも獄寺の事が気がかりだった。



「あ…あの…ごめんね、せっかくもってきてくれたスイカ…あんなことになっちゃって」

『(スイカに何があったの?)』



そこが少しばかり気になったが、獄寺が話し始めたので意識をそっちにやった。



「アネキとは8歳まで一緒に住んでました」

「!?」

『アネキ?』

「あ…獄寺君とビアンキ、腹違いの姉弟みたいで…」

『え゛』

「うちの城ではよく盛大なパーティーが行われたんですが、オレが6歳になった時初めてみんなの前でピアノを披露することになったんです」

『(お、お城〜〜〜っ!?)』

「(獄寺君って実はお坊っちゃん!!?)」



お城なんて縁が全くない発言に、二人は顔をひきつらせた。



「その時、アネキが初めてオレのためにクッキーを焼いてくれたんです。それが彼女のポイズンクッキング一号でしたーー…後でわかったんですが、アネキは作る料理がすべてポイズンクッキングになる才能の持ち主だったんです」

「『どーなってんのソレ!!!』」

「もちろん当時クッキーを食べたオレは激しい目眩と吐き気に襲われ、ピアノの演奏はこの世のものとは思えないものに…」



うわぁ〜…と容易に想像できた二人は6歳の獄寺に激しく同情した。



「でもそれは、ほんの序章でしかありませんでした」



え、と二人は獄寺を見る。



「そのイカレた演奏が高く評価されてしまったのです」

「『ええーっ』」

「気をよくした父は発表会を増やし、アネキにクッキーを頼むようになりました」

「うわああ」



衝撃的すぎて殊夏にいたっては言葉も出なかった。



「その恐怖が体にしみついて、今ではアネキを見るだけで腹痛が…」

「『(悲劇だーーーーー!!!)』」



心底獄寺に同情した二人。



「うすうす感づいてたけど、強烈なお姉さんだね」

「ええ、大嫌いです」

「『…………』」



清々しいくらいはっきりと言った獄寺に何も言えなかった。



「オレはアネキに近づけません。10代目…アネキをこの町から追い出してもらえないでしょうか」

「ええ!?」

「おまえも10代目を手伝え部下なら」

『ええ!?』

「そ…そりゃあどちらかといえばオレもビアンキがいない方がすごくうれしいけど…」

『うん…命狙われるのはちょっと…』



いきなりのことに二人は驚くが、思うところは全員一緒だ。しかし、相手はプロの殺し屋、そー簡単にただの(一応マフィアだが)学生が追い出せるはずがない。しかし、獄寺は作戦があると言った。

実は、今でこそリボーンラブなビアンキもリボーンに惚れる前は愛する男がいたとか。その男は事故で死んだが未だにビアンキはその男が忘れられないみたいだと獄寺が言う。



「そこで、その元彼とそっくりな奴を探すんです。アネキをそいつに会わせれば地の果てまでそいつを追いかけるはずです」

「『またぶっ飛んだ作戦だーーーー!!!』」



お前はほんとに頭がいいのか?と思わず疑わずにはいられなかった。



『獄寺君…その作戦にはムリがあるんじゃない…』

「だいたいそっくりな奴って…」

「これが元彼の写真です」



なぜかビアンキとツーショットの元彼が写っている写真を持っていた獄寺から、写真を受け取り見た二人はあ!と思い同時に叫んだ。



「『こんな牛男見たことあるー!!!』」



そこに写っていたのは10年後ランボそのものだった。



「たとえそっくりな奴が現れるのが一瞬でもいいんです。アネキはそいつをさがしに出ていくでしょうから」



とりあえず家へと戻り、作戦を決行することに。そーっとキッチンで家庭教師の準備をしていたビアンキに気づかれないよう、ツナと殊夏はツナの部屋へと向かっていた。



「いたいた」



ドアを開けて見ると、床に寝転がっていたランボを発見。



「ランボおきろ!」

「ん?」

「わりーんだけど、10年バズーカで10年後のランボ呼んでくれないかな」

「!!!」



ドキッ、と顔をひきつらせたランボを不思議に思う殊夏。



『どうしたのランボ君?』



殊夏が問いかけると、ランボは汗汗としながら視線をさまよわせ始めた。



「ラ…ランボは、10年バズーカなんか撃ったことないぞ!」

「はあ?」

「10年バズーカはボスに使っちゃダメだって言われてるんだもん。ラ…ランボが撃つわけないじゃん」

「『(この子ウソつきだーーーっ)』」



しかもウソをつくのがドヘタときた。



「ランボ寝るからあっちいってて」

「オレの部屋だぞ!!」

『ま、まあまあ…』



そこで、ふと殊夏は思った。



『ねぇツナ君。ランボ君が10年バズーカを使うのはリボーン君にコテンパンにされた時でしょ?』

「そうか!こーなったら…」



殊夏の言いたいことがわかったツナは窓を開けて庭を見た。



「いたっ」



庭に出てみると、ビニールプールを出して水浴びをしていたリボーンがいた。



「リボーン、頼みがあるんだ」



タオルで体を拭いていたリボーンに二人は近づく。



「軽くランボをどついてくれないかな」

「ヤだ」

『どーして?』



レオンをサングラスにすると、リボーンはそれをチャッと装着した。



「オレは格下は相手にしねーんだ」

「『(キマってるぅ〜〜〜〜!!)』」

「ガハハハハそー言ってられるのも今のうちだぞリボーン」



聞こえてきた声に屋根の上を見ると、そこにはランボの姿が。



「ランボさんはこの二階から勇気を出して飛びおりちゃうもんね!」

「じ…自分からきたっ」

『でもラッキー…』



その時ランボが飛び降りた。



「死ねリボーンッ。ボスに送ってもらったスタンガンでビリビリとな!」



スタンガンとは電気を流す携帯ほどの道具。ちなみに電気は水を通す。下には水浴びをするべくリボーンが用意したプールがあり、そこには水がはってあった。そして、ランボはぶっちゃけバカだ。



「ぐぴゃぁああっ」

「わあっ」

『きゃっ』



ランボが考えなしに着地した場所は水の中。おもいっきりランボはスタンガンの電気で感電してしまった。



「バ…バカすぎるーっ」

『ランボ君ーっ!?』



呆れながらも二人がランボを見ていると、ランボは泣きながら10年バズーカを取り出し自分に放った。



「やれやれ。なぜオレに水がしたたってるんだ?」

『ああ!!』

「で!!でた!!大人ランボ!!」



煙の中から大人ランボがプールに入った状態で出てきた。二人はここぞとばかりに慌ててビアンキを呼んだ。



「ビアンキちょっと…!!」

『ビアンキさん!!』

「ホラ!こっち来てみて!」



ツナ達の声に、手には明らかなポイズンクッキングケーキを持ってビアンキが現れた。



「ムリヤリやらすのはキライだけど、そろそろ家庭教師はじめるわよ」



ベランダからそう言って現れたビアンキは、プールにいた大人ランボに目を見張った。



「ロメオ!!」

「?」



一方大人ランボには何のことだがさっぱりだが、今そんなのは関係なかった。



「ロメオ!生きてたのね!」



嬉しそうに大人ランボに走り寄っていくビアンキにツナと殊夏はガッツポーズ。



「よし!本物だと思ってるーっ」

『やっぱりそっくりだもんねっ』

「ロメオ〜〜〜〜!!!」



そのまま感動のハグかと思いきや、そうではなかった。



「ポイズンクッキングUーー!!!」



ーーーーグシャァ!!!



「なにーーーーーっ!!!」



ビアンキは手に持っていたポイズンクッキングケーキを大人ランボの顔面に喰らわした。その行動に二人はどういう事かと驚愕する。そんな二人にリボーンが説明した。



「ビアンキと元彼は別れる直前、とても険悪だったらしいぞ。よく元彼を思い出しては腹立ててたからな」

「『え゛ーーーーっっ!!!』」

「が…ま…ん」



はっ、と二人がランボを見ると、いつものように泣き叫ぶことなく、こてっと気絶してしまった。そこからは大騒ぎ。



『きゃーっランボ君!!!』

「ランボ!!しっかりして!!寝ちゃだめだ!」

『お願いいつもみたいに泣いてーっ!!』

「10年後の医療なら助かるかもな」



そうリボーンが呑気に言った二分後、大人ランボは帰ったがどうなったかは再びランボがバズーカを使わない限り不明。












「そーだったんスか………あっ」



次の日の朝、昨日のことを獄寺に説明したツナ達。



「そーいえば…たしか元彼の死因は食中毒だったってきいたことが」

「なっ」

『それってまさか…!』



ゾク…と辺りの空気が一気に冷えたのを感じた三人は、何も言えなかった。

一方ビアンキはリボーンの「土用の丑の日にうまいうなぎが食いたい」の一言で、町を出て浜名湖に向かっていた。





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