標的9
ーーーーピンポーン.
「こんにちはー。ピザの配達に参りました」
二階の自室で掃除をしていた殊夏はその声に首を傾げた。
『おかしいな…ピザなんて頼んでないけど…』
「すみませーん」
『今いきまーす!』
とりあえず出なくてはと階段を慌てて駆け下りて殊夏が玄関まで来ると、そこには異国の顔立ちの美女がピザを片手に立っていた。
『(え?なにこの綺麗な人!?)』
「あさり(ボンゴレ)ピザお届けに来ましたー」
『あの…』
断ろうと殊夏が口を開くと美女はなぜかガスマスクを装着。
『え゛?』
「召し上がれ」
そう言ってピザの蓋を開けるとそこから毒々しい煙とが溢れ出てきた。
『んんっ!!な…くるし…!』
首をおさえゴホゴホと咳き込む殊夏の後ろから撃たれた銃弾がピザをぶっ飛ばした。
「ちゃおっス殊夏、ビアンキ」
「大丈夫殊夏!?」
『ツナ君!リボーンくん!』
振り向けば銃を構えたリボーンと青い顔をしたツナがいた。
『なんで…と言うか何処から』
「玄関にビアンキのママチャリがあったからな」
「悪いとは思ったけどベランダからリボーンがさっさと行っちゃって…」
「リボーン」
ビアンキと呼ばれた美女は慈愛に満ちた表情でガスマスクを取り外した。
「むかえにきたんだよ。また一緒に大きい仕事しよリボーン」
「『え!?』」
「やっぱりあなたに平和な場所は似合わない。あなたのいるべきはもっと危険でスリリングな闇の世界なのよ」
「言ったはずだぞビアンキ。オレにはツナを育てる仕事があるからムリだ」
涙ながらに言ったビアンキにリボーンは言った。
「……かわいそーなリボーン」
「え?」
『?』
「この10代目が不慮の事故かなにかで死なない限り、リボーンは自由の身になれないってことだよね」
「んなぁーーーーーーっ!?」
それで道で毒々しい缶ジュースあげてきたのか!!と納得したツナだった。
「とりあえず帰るね。10代目をころ…10代目が死んじゃったらまたむかえにくる…」
「ちょっ」
「あとそこの小娘を殺したらね…」
「『何言っちゃってんのーーーーーっ!?』」
殺す発言に血の気が引いていった二人を残してビアンキは去っていった。
「なんなんだよあの女は〜!!?」
助けてくれたお礼にと劉閻家でケーキをご馳走になりながらツナはリボーンに問いつめていた。
「あいつは毒サソリ・ビアンキっていうフリーの殺し屋だ。あいつの得意技は毒入りの食い物を食わすポイズンクッキングだ」
「また変なの来たなーーーっ!!どーなってんだよおまえんとこの業界!!」
『あの人、リボーンくんにゾッコンみたいだけど…』
「つきあってたこともあるぞ」
「はあ!?つ……つき合ってたって、あの女がおまえの彼女だったってコト…!?」
「オレはモテモテなんだぞ。ビアンキは愛人だ」
「おまえ意味分かって言ってんのかーーーーっ!!?」
『しかも四番目…』
指を四本立てて言ったリボーンに口元を引きつらせる。
「ちなみに殊夏は正妻候補だぞ」
『私が狙われた理由絶対それだっ!!!』
「つーかおまえ勝手に決めるなよ!!」
本当に赤ん坊か!?と二人して疑う。
「と…とにかくなんとかしろよ!!あいつオレの命だけでなく殊夏の命まで狙ってんだぞ!」
『ねえ、どーにかならない?』
「ツナ…人はいずれ死ぬ生き物だぞ」
「急に悟るなーーーーっ!!!」
「安心しろ。殊夏はオレが守ってやるぞ」
『リボーンくんっ…』
「ときめかないで!!原因作ったのコイツだからね!?」
その日ツナたちが帰った後殊夏がふと庭を見れば、ビアンキが持ってきたピザが庭に咲いていた花を溶かしていたのを見てぞっとした殊夏だった。
「殊夏あんたどーしたの?」
『え?』
「自分が作ったおにぎりじっと見ちゃって」
家庭科の実習でおにぎりを作っていた殊夏に花が何やってんだコイツという目でたずねてきた。
『あ…ちょっとね』
あのポイズンクッキングってある意味才能だなぁ、とぼんやり考えていただなんて言えなかった。
「そういえば朝から綺麗な女の人がジュースをくれたんだけど」
『綺麗な女の人?』
「その人のジュースをツナ君がかばんで弾いたんだよね」
『(あ…ビアンキさんだ)』
まさか今日何か仕出かすのか…?と殊夏は昨日のポイズンクッキングを思い出してまたぞっとした。それから、家庭科が終わった女子たちはクラスで男子に作ったおにぎりを振る舞っていた。
「殊夏誰にあげるの?」
「どーせ沢田でしょ」
『え!?ち、違う!自分で食べるもん!』
「分かり易いわねあんた…」
赤くなりながら俯きムキになる殊夏に花はニヤニヤ笑いをやめて呆れる。
「ちょっ、まてよっ。何してんだおまえ!?」
するとばっとツナが殊夏の前へと出てきた。
『ツナ君!?』
「!?あれ?どこいったんだ?」
「ツナ君殊夏のおにぎり貰いに来たの?」
「えっ」
「積極的だなオイ」
「えっ。いや…あの…」
普段なら気にせず食べるだろうが、今は別だった。
「(これ食べるのーーーー!!?)」
実は殊夏が気づかないうちに殊夏のおにぎりはビアンキによってポイズンクッキングと交換させられていたのだ。そのせいで食べるに食べれずにいたのだが、殊夏にはそれがわからなかったので自分のが嫌だったのかとしゅん…となった。
『あ…あのね、いらなかったら無理に食べなくてもいいよ!』
「!いや…そ…そんなことはなくて…っ」
慌てて首を振るツナだったがおにぎりを手に取ることはできないでいた。そんなツナの横から手がのびてきた。
「10代目が食わないんならオレもらっちゃいますよ」
「そーだな獄寺」
それは獄寺に山本だった。
「ちょっ」
「いただくぜ」
『うんっ』
二人が食べてしまえば死んでしまう、と慌てたツナはぎゅっと目を閉じ決心した。
「食べたら死ぬんだぞーーーーーっ!!!!」
「!」
「ツナ?」
二人がおにぎりを口に入れる前にツナは二人の手からおにぎりを手で弾いた。そんな様子を高層マンションから見ていたリボーン。
「よくファミリーを守ったな。それでこそボスだ」
ニッと笑うとツナの額とお腹に一発ずつ撃ち込んだリボーン。
「死ぬ気でおにぎりを食う!!!」
『えっ…(死ぬ気?)』
なんで死ぬ気に?と首を傾げていた殊夏の前でツナは殊夏のおにぎりを食べた。
「うまい!」
「!!ポイズンクッキングが効かない!!?」
「死ぬ気弾をヘソに撃つと鉄の胃袋(アイアンストマック)だ。なにを食ってもへっちゃらだ」
「たりねー!!!」
するとツナが通った後にはおにぎりが消えていた。
「ぁ、あれ?おにぎりが」
「あ!!ツナが食ってるーっ」
見ればもしゃもしゃとツナが食っていた。
「まだ足りねー!!」
「うわ!!こいつ無差別に食いまくる気だ」
「だれか止めろー!!」
そんな教室の様子を最初から見ていたビアンキは悔しそうに呟いた。
「くそうボンゴレ10代目。でもいつかリボーンをとりもどす…」
ビアンキの心リボーン知らず。
「おっ、ヘラクレスオオカブト」
そして、このおにぎりの一件は意外な波紋をよんだ。
『そんなことないよ…(あれポイズンクッキングだったって聞いたし)』
「いいやまちがいないわ。あれは沢田の告白ととるべきよ」
「よかったね殊夏!」
『ねえみんなは一体アレをどうとったの?』
「男らしかったっス10代目」
「?」
「やるなーツナ」
「?」
みんなはツナの「食べたら死ぬんだぞ」という言葉を
「オレが殊夏からもらったおにぎりを食った奴は、ぶっ殺すぞゴラァ!!」
ぐらいにとっていた。
「さすが10代目っス」
「??」
next.
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