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標的7.泣き虫ランボ




お出かけ帰りにツナの家の前を通りがかった殊夏の頭上で、爆発音がした。



『……子供?』



べしゃっと地面に、すすだらけで頭のアフロヘアーに小枝や葉っぱが刺さった牛柄の服を着た子供が落ちてきた。それを見た殊夏は頭上を見て、そういえば爆発音が…と思いその視線を横へとずらした。その先はちょうどツナの部屋だった。そして、その部屋では確か今日は家庭教師の日だからと勉強をしていたのを思い出す。



『……』



なんとなく事情がわかった殊夏はぷるぷるとその牛柄の子供が震えているのに気づきしゃがみ込む。



『…君、大丈夫?』

「う、うわぁああああ!!」

『ひっ!?』



話しかけた途端大声で泣き出した牛柄の子供。ど、どーしようとオロオロしていてチラ…とツナの家を見た。



『ぁ…リボーンくんの知り合いかな?』



たずねてみると、泣き声が小さくなりぐす、ぐす、と嗚咽をもらす。どうやら肯定のようだ、と殊夏は思った。



『じゃあ、リボーンくん呼んできてあげるよ』

「うわぁああああああああ!!!」



ビクッと反応したかと思うと殊夏にしがみつきブンブンと大きく首を振りながらまた泣き出した。



『(なんか知らないけど恐怖刻まれてる〜!!!)』



あまりの必死さに若干引いた殊夏だった。



『(…どーしよう)』



ツナの家へと連れて行こうかとするがあまりにも必死に嫌がるので、仕方なく土手へと連れてきた。隣でぐすぐす泣いているのを見て、なんだか自分が泣かせたみたい…と複雑な気持ちになる。



『ところで君名前は?』

「ぐす…ラ、ランボ…」

『そっか。ランボくんか』



ちょっと待ってね、と言ってカバンをごそごそとあさるとはい、とキャンディを渡す。



『アメ、好きかな?』



コク、と頷くと受け取りころころと可愛らしく口の中で転がし始め、おもむろに口を開いた。



「ラ…ランボの夢はボヴィーノファミリーのボスになって…グス、全人類をひざまずかせること…」

『(泣きながらすごいこと言ってるよこの子ーーーー!!!)』



マフィアということにも驚いたが、リボーン同様見た目と言動の=が成り立っておらず、ガーン…とショックを受けながら殊夏はまた引いた。



「でもそーなるには超一流のヒットマン、リボーンを倒せってボスにいわれた…」

『(リボーンくんって超一流なの?)』



疑問に思いながらもなんとなく納得する殊夏。



『ランボくんはリボーンくんに会ったことあるの?』

「ある!はじめてボスにバーにつれていってもらった時、あいつがカウンターにすわってたんだ」



ランボには悪いがランボにバーは似合わないと心底殊夏は思ってしまった。



「オレっち達は初対面なのにいろんな話をしたんだ」

『へぇ』

「ランボは大好物のブドウを食べながら…リボーンは鼻でガムをふくらませてた」

『(それ寝てるよ!!!)』



結局は何も話してないということらしい。チラ、と腕時計で時間を確認するともうお昼だということに気づいた。



『ランボくんそろそろ帰ろうか』

「……」



ぴし、と固まったランボにかまわずよっこいしょと抱き抱えると歩き出した殊夏。しかしいざチャイムを鳴らそうとするとまた大声で泣き出し、挙げ句殊夏からいっこうに離れようとしない。



『ラ、ランボくん離してっ…ね?』

「わぁああああああ!!」



必死のランボに必死に離れてもらおうと引っ張るがランボは頑固に服を掴んだまま離れようとしない。



『(そんなにリボーンくんが恐いの?リボーンくん一体何したの!?)』



相変わらず容赦なく何か痛い目にあわせたのだろうか。困り果てて殊夏は自分の家に連れて行こうかとも思ったが、勝手に連れて行くのも気が引けた。



『どーしよう……』



本日何度目のどーしようなんだろう…ぽつりとそんなことを頭のすみで殊夏は考えていた。まあそんなことより、今のこの状況をどーしようと考えることを優先だが。



「わぁああああ!!う、…うわぁああああああああ!!!」

『…男の子がそんなに泣いちゃダメだよ』

「わぁああああああ!!」



とりあえず泣きやませることにした。



『マフィアのボスになるんでしょ?そんなに泣いちゃ頼りないよ。男の子は簡単には涙を見せないものなんだから』

「う、うう…グス…」



泣き止んだ、とぱっと笑った殊夏。



『ほら、リボーンくんのとこ行こう?』

「うあああああ!!」

『(ふりだしー!!)』



言わなきゃよかったか、と後悔した時、目の前のドアがガチャ…と音を立て開かれた。











「…おいリボーン。ランボのやつ外で泣き続けてんだけど」

「どっか行ったと思ってれば、うるせぇやつだ」



昼時、昼食を食べようとおりてきたツナとリボーンは、数分前から響いているランボの泣き声に玄関を見る。まあリボーンはうるさいという以外に興味がないのか視線は一切向けなかったが。



「ママン今日のメニューは?」

「今日はパスタよ。ところで外で泣いてるのはリボーン君のお友達?」

「あんな奴知らねーぞ」



ひょい、とイスに座りながらリボーンが言うと、奈々はちょっとちょっととツナを呼んだ。



「なに?」

「リボーン君、ケンカしちゃった?」

「(そんなレベルじゃないよ……)」



先程のことを思い出したツナは顔をひきつらせた。



「ツナは二人よりお兄ちゃんなんだからちゃんと仲裁に入ってあげて。今から呼んでくるから」

「ええっ、やだよっ!!」



ご飯を用意するとツナの言葉に聞く耳持たず玄関へと向かった奈々。チラ、とリボーンを見ればパスタを美味しそうにさっさと食べ始めていた。諦めたのかこれからの事を考えてか、あるいは両方からかツナは盛大にため息を吐いた。



「あら、殊夏ちゃんじゃない!」

「えっ!?」



奈々の言葉にぱっとそちらを見たツナの視線の先には、ランボを抱えた驚きの顔をした殊夏の姿が。



『あ…こんにちは』



困ったように笑いながら、殊夏はそう言った。



『すみません、お昼ご馳走になってしまって…』

「いいわよ!ランボ君の世話みてもらってたんだし、大勢の方がにぎやかで楽しいもの」

『ありがとうございます』



笑顔の奈々に殊夏もお言葉に甘え笑顔でお礼を言う。



『ごめんねツナ君。おじゃましちゃって』

「いや…殊夏こそランボが迷惑かけたみたいでごめん」

『……あー…うん。そんなことないよ』

「(ちょっと迷った!?)」



殊夏にそこまで思わせたランボを逆に尊敬したツナだった。



「あ、母さんお隣に回覧板もっていくわね。仲良くしてるのよ。殊夏ちゃん、ゆっくりしていってね」

『ありがとうございます』



そして奈々が出て行ってから沈黙が続く。明らかにそれはランボとリボーンの関係をどうしようという感じからの空気だった。



「リボーンなんとかしろよ。オレじゃ手におえないよ!」

『…リボーンくん美味しそうに食べるね』

「シカトかよ」



リボーンに助けを求めたがモグモグと食べるだけでなんの反応もなかった。そんなときランボがゴクリ、と唾をのみ込んだ。と、思ったら「っしゃあ」とかけ声と共にナイフをリボーンめがけて投げたが、それはいともあっさりと返され額に突き刺さった。



「(学習しろよーー!!!)」

『(恐怖刻み込まれるわけだ!)』



ガーンッと衝撃を受けながら二人は思った。ナイフが刺さったランボは泣き出したかと思うと、泣きながら何かを取り出した。それはバズーカでランボはなんとそのバズーカの銃口を自身へと向けた。



『えっ!?自分に!!?』

「そのバズーカってたしか……」



二人がぎょっとしているうちに紐を引いて引き金を引いたランボ。



「ふ〜」

「え!!?」

「やれやれ。どうやら10年バズーカで10年前に呼び出されちまったみてーだな」



煙の中から現れたのはランボではなくツナ達よりも少し年上の男だった。



「なっ、このヒト……え?」

「お久しぶりです、若きボンゴレ10代目に殊夏さん」

『…だ、誰…??』



なぜ自分たちの名前を?と二人は困惑する。



「10年前の自分が世話になってます。泣き虫だったランボです」

「『な、なんだってー!!?』」



驚愕の事実に面食らった二人にランボは説明する。



「10年バズーカで撃たれた者は10年後の自分と5分間入れかわることができるんです」

「(うっそーーーーっっ。この伊達っぽいにーさんがあの牛ガキ〜!!?)」

『(…10年間ってすごい)』

「よおリボーン、みちがえちゃっただろ?オレがおまえにシカトされつづけたランボだよ」



話しかけてきたランボにモグモグモグモグとパスタを食べ続けるリボーン。



「『(なおシカトだあーー!!!)』」

「…やれやれ。こうなりゃ実力行使しかねーな。10年間でオレがどれだけ変わったか見せてやる」



そう言うとどこからともなく角を取り出すと頭に装着したランボ。



「サンダーセット」



するとその角に電流が集まり始めた。



「オレのツノは100万ボルトだ」

「なっ、ありえねーっ!!」

「死ねリボーン!!電撃角(エレットゥリコ・コルナータ)!!!」

『リボーンくんっ…!』



あのランボとは思えない機敏さでリボーンへと突進していくランボに焦ったように殊夏がリボーンの名を呼ぶ。しかし、心配は全くの皆無だった。

ーーーーぐさっ.



「 「『!』」」



見向きもせずフォークをランボの頭に挿したリボーン。それを喰らったランボは「が・ま・ん」と呟いたかと思うと…。



「うわぁああ」



と泣き叫びながら走り去っていった。



「(か…変わってねーじゃん!!!)」

『(てゆーか…)』

「『(やっぱリボーン(くん)こえーーーーっ)』」

「こら、ツナ!!」



いつの間にか帰ってきた奈々の足下には



「仲裁に入ってっていったでしょ?」

「うわぁああ」

「『(元に戻ってるー!!)』」

「ランボ君リボーン君とお友達になりたいんだってよ」

「え゛゛!!(友達になりたかったの…!?)」


『だったら最初から素直にそう言わなきゃ…』

「なんてウソだよーん!!死にやがれー!!」



手榴弾をリボーンへと投げたランボだったがリボーンはお皿でランボへと弾き返しその衝撃で手榴弾もろとも外へと飛び出したランボ。爆発音と共に「ぐぴゃあぁあ」という悲鳴が聞こえてきた。



「ママンおかわり」

「「『………』」」



容赦ないリボーンに背筋が凍るのを感じた3人だった。





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