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標的6




その日学校が休みだった殊夏は家でのんびりとくつろいでいた。ソファに広々と寝転がり大好きなアーティストの新曲を聴いていて、あ、と思い出した。



『回覧板ツナ君の家にまわさなきゃだった』



失敗だ。ゴミ捨ての時についでに渡せばよかった…。



『…でも、ツナ君にもしかしたら会えるかも』



そう期待に呟くと、少し考えて動き出した。回覧板を手に隣の家へと向かおうと玄関を開けて数秒後、この日本でなぜか聞き慣れてしまったあの銃声が聞こえた。



『え?』



もちろん音の出所は今まさに向かおうとしていたお隣さん、沢田家からだった。



『声が聞こえないって事は…死ぬ気弾じゃないってことかな?』



じゃあリボーンくんが脅しで撃ったのかな?と少しばかり顔を青くさせながら考える。そしてはた、と手に持つ回覧板を見る。



『…持ってかなきゃ、だよね』



ごく、と唾をのみこむと、ツナの家へと歩き出した。玄関前までくると、チャイムを押すか押さないか一瞬躊躇しながらもえい、と押した。



『…誰も出ない』



しかし、いつもならツナの母、奈々が元気よく出迎えるのだが誰も出てこなかった。あれ?と首を傾げた殊夏はもう一度チャイムを鳴らそうとして固まった。



「きゃあああああ」

『ひ、悲鳴!?』



中から聞こえてきた奈々の悲鳴にぎょっとする殊夏。



『な、なにが起こって…?』



おもわず数歩後ろへと下がってしまった殊夏は、もう一度チャイムを鳴らそうとして今度は飛び跳ねた。



「ぎゃああああ!!」

『ええええ!?』



先程よりも切羽詰まったような奈々の悲鳴に殊夏はどうしようかとオロオロする。



『な、なんだろ。まさか強盗!?』



だったらどうしようと焦り始めた殊夏の前で、ゆっくりとドアが開かれた。ぎょっとした殊夏はおもわず身構えた。



「ちゃおっス」

『リ、リボーンくん!?』



だが、そこから現れたのは強盗でもなんでもなく、ヘタすればそれより恐いツナの家庭教師であるリボーンだった。相変わらずの愛くるしさ(見た目だけ)にキュンとなりながらも、リボーンの目線に合わせてしゃがみこむ。



「遅くなって悪かったな」

『い、いいけど…リボーンくん。いったい中で何が…』

「わびと言っちゃなんだが、中でお茶でもしていけ」

『え、え?』



話をスルーし戸惑う殊夏の手を引っ張り中へと入っていくリボーン。勝手にあがっていいのかな?と思いながら進んでいたが、キッチンを見た殊夏の頭からはそんなもの吹っ飛んだ。



『……』



殊夏はキッチンを見て思考も動きも何もかもが一時停止した。キッチンではテーブルは真っ二つで冷蔵庫やら電子レンジやらが壊れており、床も何か重いものが乗せられたかのように割れていた。さらに驚くべきは床になぜか倒れている奈々と友人京子の姿が。奈々は口から泡を吹いて目を回しているし、京子にいたってはなぜか下着姿の上に毛布が無造作に被せられていた。

……まさに絶句。



『…えーと、何があったのいったい…』



とりあえず聞いてみることに。



「ロシアンルーレットをしてたんだが京子に死ぬ気弾が当たってしまったんだ」

『ええっ!?』

「で、オレがこのリバース1tでママンに詰め寄っていた京子の頭を叩き、死ぬ気タイムを夢だったことにしたんだぞ」



ズシッと床に置かれたリボーンぐらいの大きさのハンマー。床が割れているのはこのせいか、と理解したと同時に、京子はこんなものをくらって大丈夫なのかと思った。



『あれ?そういえばツナ君は…』

「え、劉閻さん!?」



ツナの声がして、入り口の方を見るとそこには驚きと焦りが入り混じった顔をしたツナの姿が。



『あ…おじゃましてます。回覧板を届けに来たんだけど…』

「や、あの、これはその…っ」



苦笑いをしながらキッチンの惨状を見た殊夏になんて言おうかと焦るツナ。そんなツナに気づいた殊夏は言う。



『あ…事情はリボーンくんから大体聞いたよ』

「えっ!?リボーン!!」



勝手なことを、という感じにリボーンを見るがどこ吹く風…というより無視。そんなときツナの手に持っている服が女子の制服だと気づいた殊夏。



『それ、京子の制服?』

「あ、うん…劉閻さん。悪いんだけど京子ちゃんに服、着せてもらってもいいかな?」

『…』

「…劉閻さん?」



何の反応がない殊夏に何か怒らせるようなことを言ってしまったかと焦り始めるツナ。



『あっ、ごめんなさい!服?いいよっ』

「あ、ありがとう…」



はっとすると落ち着きなく言ってツナから服をとると早速着替えさせ始めた。その間にツナはキッチンを片付け、リボーンは奈々をソファへと運んでいた。京子に服を着せながら、ぼんやりと殊夏は考えていた。



『(そういえばツナ君、いつも私のこと劉閻さんって…)』



ぼーっとしていたせいでかけ間違えたボタンを慌ててかけ直す。



『(京子のことは名前で呼んでいるのに…)』



ほんの少し、京子に嫉妬してしまい唇を小さく尖らせ、殊夏は小さく息を吐いた。











『それじゃあツナ君リボーンくん、そろそろ私帰るね』

「ごめんね、片付けまで手伝ってもらっちゃって」



京子を家まで送り、せっかくだからとキッチンの後片付けまでした殊夏に頭を下げるツナ。



『気にしないで。私が勝手にしたことだから』

「悪かったなツナなんかのせいで」

「なんかってなんだよ!大体、もとはといえばリボーンのせいだろ!?」



二人のやりとりにクスクスと楽しそうに笑う殊夏に、ツナは照れ笑いを浮かべた。



『じゃあねツナ君リボーンくん。また明日ね』

「うん、じゃあね」

「ちゃおちゃお」



背を向けて歩き出した殊夏の後ろで、リボーンがゲシッとツナの足を蹴った。何するんだ、と文句を言おうとしたツナに何か耳打ちしたリボーン。すると顔を赤くしたツナは無理無理ダメだろっと手を振るが、ジャキっとリボーンに銃を向けられええ!?と思いながらも殊夏の後ろ姿を見た。



「…っ、殊夏!」

『……え?』



門に手をかけていた殊夏は、ツナの声に目をぱちくりとさせながら振り向いた。今…名前…。信じられない気持ちで、ツナを見つめる。



「あ…また、明日!!」

『…うん!また明日っ』



顔を真っ赤にさせながらもそう言ったツナに、嬉しそうに笑いながら殊夏は手を振った。そして、まさか…と思った殊夏はツナの隣のリボーンを見た。視線があったリボーンはニッと笑ってきて、ああやっぱりと殊夏は可笑しそうに笑いながらまたツナたちに手を振って家へと帰った。



「(リボーンくんに感謝…!!!)」



その日機嫌は最高潮の殊夏だった。





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