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山本の目が揺らいだとき、殊夏と山本の間に何かが顔面から滑り込んできた。



「いつつ………っ」

『ツナ君…?』

「!!」

「ツナ…」



滑り込んできたのは、リボーンに半ば強引に追いやられたツナだった。自分の状況を把握したツナはサアァっと顔を青ざめる。



「え…あ…どっ、どーしよーっ」

『…ツナ君、武を止めにきてくれたの?』

「えっ、や…その…」

「…止めにきたならムダだぜ。おまえならオレの気持ちがわかるはずだ」

「え?」



山本の言葉にふせていた顔をあげるツナ。



「ダメツナってよばれてるおまえなら、何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがマシだって気持ちわかるだろ?」

「えっ、あの…っいや…山本とオレはちがうから…」



その言葉にピクッと山本は反応した。



「さすが最近活躍めざましいツナ様だぜ。オレとはちがって優等生ってわけだ」

「え!ち、ちっちがうんだ!ダメな奴だからだよ!!」

「!?」



慌てて山本にツナは否定する。



「オレ、山本みたいに何かに一生懸命打ちこんだことないんだ…【努力】とか調子いいこと言ったけど、本当は何もしてないんだ。昨日のはウソだったんだ………」



ごめん!とツナはバッと頭をさげ謝罪する。



「だからオレは山本とちがって死ぬほどくやしいとか、挫折して死にたいとか…そんなすごいこと思ったことなくて…むしろ死ぬ時になって後悔しちまうような情けない奴なんだ…………」



じっとツナを見つめながら黙って話を聞く山本。



「どーせ死ぬんだったら死ぬ気になってやっておけばよかったって。こんなことで死ぬのもったいないなって…………」

『…ツナ君…』

「だからお前の気持ちはわからない…ごめん…」



するとくるっと回れ右をしたツナに、え?と山本も殊夏も軽く目を見開いて見ていると走り出したツナ。



「じゃ!」

「!まてよツナ」

「!?」



ーーーーズルゥ!!



『ツナ君!!』



走り出したツナのシャツをおもわず掴んだ山本。だがいきなりのことにツナはその場で後ろへと滑ってしまった。滑ったツナはその勢いでフェンス越しに山本にぶつかり、そのせいでブチッという音と共にフェンスは壊れた。



「あっ!!」



支えを失い、バランスを崩したツナと山本は屋上から落ちていく。



『っ…リボーンくん二人を助けて!!』



がしゃん、と無事なフェンスを握りしめながら最後の頼みというように殊夏は叫んだ。その直後、銃声が聞こえたかと思うと、下の方からツナの「空中復活!!!」という大声が聞こえてきた。



『死ぬ気…!』



安心したように笑って下を覗き込んだ殊夏の隣では、京子が不安げな顔で覗き込んでいた。しかし落ちていくのは変わらず、ハラハラしだした殊夏の耳にまた銃声が。



『…ス、スプリング?』



ツナの頭からはスプリングがはえていた。そのおかげで地面をバウンドひ、二人は無傷だったが。



『(…あれは何弾なんだろう)』

「つむじを撃つとつむじ育毛スプリング弾だ」



屋上で最早なんでもありだね…と思っていた殊夏。その数階下では廊下の窓から様子を伺っていたリボーンの丁寧な説明があった。



「よかったね殊夏。二人とも無事みたいだよ」

『うん…よかったよ』



嬉しそうに笑いながら京子が言うと、殊夏も安心したようにほっと息をついて笑った。



「山本大丈夫か?」

「ああ」



地面に着地した時には死ぬ気タイムは終わっていた。



「ツナ!おまえスゲーな」

「えっ?」



山本の言葉になんで!?と疑問符を浮かべるツナ。



「おまえの言うとーりだ。死ぬ気でやってみなくっちゃな」

「!」

「オレ、どーかしちまってたな。バカがふさぎこむとロクなことねーってな」

「山本…!」



へらぁっと笑った山本にツナはほっとした。



「(リボーンサンキュー。死ぬ気が山本を救ったよ)」

「あーあ。殊夏に怒鳴られるなぁ」

「えっ?」

『武ー!ツナ君ー!』



丁度その時殊夏がやってきた。



「劉閻さん!」

「よぉ殊夏!」

『よぉ殊夏!じゃないよ!!』



ずいっと山本に詰め寄りながら怒鳴った殊夏にええっと驚くツナ。山本はいつものことのようにハハハと笑っている。



『もう!!何考えてんの!!!心臓停まるかと思うほどビックリしたんだからね!』

「はは、悪かったな心配かけて」

『本当だよ。ツナ君にまで迷惑かけて…バカ武。心配したんだから…』

「…ああ。もう二度としねーから」

『当たり前だよ』



宥めるように殊夏の頭を撫でる山本。一方ツナは、自分はここから立ち去った方がいいのだろうかと、眉を下げながらオロオロする。



『ごめんなさいツナ君。武が迷惑かけちゃって…』

「え、やっ…そんなこと…っ(劉閻さん…山本のこと本当に大切なんだな…)」



噂はあながち嘘ではなさそうだな…と、一人落ち込むツナに気づかず殊夏は続ける。



『幼なじみの私から、しっかり言っとくから!』

「………えっ!?幼なじみ!?」



一瞬フリーズしたあと、殊夏の言葉に目を見開いてツナは驚いた。それにキョトンとしながらも笑顔で殊夏は説明する。



『そうだよ。武と私、赤ちゃんの頃からの幼なじみなの』

「こいつの引っ越しで離れるまでは、近くに住んでたんだぜ。まあ、オレらが幼なじみって知ってる奴はあんまりいないけどな」

「……な、なんだ。そーだったのか」



ほっと山本の時同様に安心したツナは笑った。それに殊夏も山本も揃って首を傾げる。



「どーしたツナ?」

『何かあったの?』

「えっ!?な、なんでもないよっ!(二人がつきあってるってのは…ウソだったのか)」



て、あれ?なんでほっとしてんだ?と首を傾げたツナ。



『…あっ、その…ツナ君』

「え?」

『……服…』

「ああっ!!」

「そういえばいつの間に脱いだんだ?ツナ、おまえマジックもできるなんてスゲーな!」

「(ええーっ、そうなる!?)」

『ホント…武って天然だよね…』



慌てて服を山本と一緒に取りに行ったツナたちの後ろ姿を見送る殊夏。そして何気なしに校門を見ると、黒い小さな後ろ姿を発見した。



『…ありがとうリボーンくん』



聞こえるはずはないだろうけど。そう思っていた殊夏の言葉はニッと笑っていたリボーンにしっかりと届いていた。

ーーーーこーしてツナに親友ができた。だがリボーンはそう思ってなかった…。



「(ファミリーゲット)」



周りに笑われながらも服を探すツナを見てにっこりと京子が笑うのと、リボーンを見て殊夏がにっこりと笑うのは一緒だった。





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