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「…さぁて次次…」

『…貴志くん、大丈夫?』

「え?」

「…顔が青いな」



二人が言うように、夏目の顔色は普段青白い雪野よりもはるかに悪かった。



「バレたか…先生が言ったように、名前返しは雪野にはさせないほうがいいな…思ったよりどっとつかれる…」

「あたりまえだ。あやかし相手を甘くみんことだ!!ここはすっぱり、私にゆずってしまえ」

「『しつ・こい』」



かむおん、と目をキラキラとさせながら斑が言うが、バッサリとそれをきった。



「…お前たち、何か見たんじゃないか?」

『え…』

「ん?ーーーーいや?…あ、なぁ先生は?友人帳に名前はあるのか?」

「さぁ?試してみるかい?」



ちら、と友人帳を持っている雪野を見ながら斑が言うが、雪野は調べようとせず、夏目も何も言わなかった。その時、草陰からガザッと音がしたかと思うと、そこからもう一匹の妖が出てきて夏目に襲いかかった。



「わ…」

「夏目!」

『貴志くんっ!』



襲いかかられた衝撃に下の方へと倒れ落ちた夏目。



『っ…我を護りし者よ、その名を示せ!』



大急ぎで友人帳を手に唱えると、先程と同じようにパラパラとページがめくれていく。



『早く…早く…あっ!』

「できたか?」

『うんっ』



ビリッと破り下へと飛び降りる。



「放さんか!!」



斑が夏目と妖の間に割って入る。眩い光に妖が怯み、その隙に抜け出した夏目に雪野は手を伸ばした。

夏目は雪野から紙を受け取り紙を噛み咥えた。



「う…」

『っ…』



グッと紙を噛んだ時、夏目と雪野の脳内に何かが流れ込んだ。



「(名前を噛むたび流れ込んでくるのは…)」



友人帳に残された妖怪の記憶か、祖母たちの思念かーーーー…。



ーーーー



「ああっ、わしのまんじゅう!」

「…あんまり、おいしくないみたいよこれ」

「レイコったら…」

「ひっ、人のくせに何をするか意地汚い!!」

「どっかおいしいまんじゅう売ってたっけ?」

「そうですねぇ…七辻屋のがおすすめですかね」

「……」

「ああ、あそこのね。よし。もし私たちと勝負して勝てたらごちそうしてあげましょうか」

「…お前たち、私が恐ろしくないのか?」

「ええ」

「だって」

「「私たちはとても強いもの。」」



饅頭ごとき、さっさとこの場を去れば良かったと後悔する。



「えいっ」

「それっ」

「ぎゃっ!!痛!!いたたた……」

「ふふふ。私たちの勝ちですね」

「ひ、ひどい女たち…」

「くすくす」


愉快そうに笑う二人にふと思う。



「さっきから気になっていたが、その頬のキズはどうした」

「石をぶつけられただけよ」

「私たちは気味が悪いそうです」

「……」

「あら。あなた、きれいな名前ですねぇ」

「ほんと。これであなたは私たちの子分。名前を呼んだら飛んできてね」





レイコーーーー…。

ミヨーーーー…。

ああ、今日も呼ばないのかい?

さみしい。さみしい。前よりずっと。

かえせ。かえせ。どんなに待っても呼んでくれないくらいならーーーー…。



「……ひしがき=v

「レイコ、ミヨ、もういいのかい?もうお前たち一人でも平気かい?」

「ーーーー…二人はたぶん、けして独りではなかったよ」

『…ありがとう』



心やさしい、祖母の友人ーーーー…。



「レイコとミヨには逢えたかい?ヒドイやつだったろ」

「……かもな」

『でも……ミヨさんもレイコさんも、いつも一緒にいなかったから…』

「ミヨさんの体が弱くて入退院の繰り返しだったって聞いた」

『二人はたぶん、その時間がさみしかったんでしょ?』

「だから友人帳を取り返しに、妖怪達が自分の所へ訪れるのを待ったんだ。さみしさから一匹でも多くと。妖怪達は、そんな中の一匹にすぎないことでさみしいとーーーー…」



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