![](//static.nanos.jp/upload/tmpimg/53618/95.jpg)
6
「その中に私の名はないよ」
静かに口を開いた斑へと二人は戸惑ったように視線を向ける。
「一度勝負を断ったら、ちょくちょく勝負しろと訪れるようになったから」
時々ミヨがいない事もあったが、と斑が言うと雪野は目を伏せた。
「一週間ほどこない日があったかと思えば、それ以来レイコ一人で来るようになった」
「『……』」
「けれど、ある日ピタリと…」
「『……』」
「二人とも、あきらめたのかと思っていた。人の命が儚いのも忘れていた…」
『……先生が、友人帳を欲しがる理由って』
「…あいつらのことだ。遺品さえひきとる者もいまいと思って、友人帳は私が預かってやろうと思ったのだがーーーー…やれるかい夏目、雪野」
じっと三人は見つめ合うが、答えは決まっていた。
「ーーーーああ、やりたいんだ」
『私も、最後までやり通したいーーーー』
迷いのない夏目と雪野の言葉が、真夏の青空に反響した。
ーーーーそれからは。
『あの…塔子さん』
「なぁに雪野ちゃん?」
『ニャ、ニャンコ飼ってもいいですか?』
「まあまあ。頭のでっかいニャンコν」
ほんの少し。
「昨日大丈夫だったか?」
「はは、ありがとう」
「夏目、結局捕まったのか?」
「は?」
さわがしい日々。
「レイコー!ミヨー!」
「わーっ!?」
『やーっ!?』
「『(ストレートに恨んでる奴も多いんだな)』」
妖怪のことはあいかわらず、あまり好きにはなれないが。
「だからいちいちついてくるなよ」
「お前たちがいつ友人帳を落とすかわからんじゃないか」
『そんなことしないよ…』
「言っただろう。見届けると」
それは、良くも悪くも、出逢いのひとつ。
「…あ、先生。あそこのまんじゅううまいんだって」
「何!?食う食う!!」
『え?でもニャンコって甘いもの食べてもいいの?』
「ニャンコじゃないと言っとるだろうが!」
next.▼ ◎