妖を呼び出す
『先生のせいでよけいな買い物しちゃったよ…』
「なに?この私に貢げるなんて有難いことだろう。用心棒してやってるんだ、このぐらい当然だ」
『猫は甘いものダメなんだよ』
「猫ではないと言っとるだろーが!」
七辻屋の饅頭を買って帰った雪野は、ため息しつつ斑を片腕に扉を開ける。
『ただいまー』
「おかえりなさい、雪野ちゃん。あら、ニャンコちゃんも一緒だったのね」
『塔子さん、これ良かったら…七辻屋で買ってきました』
「あらあら、ありがとう。ちょうどお茶うけを切らしてたところだったの。主人は今日遅いから、後で貴志くんも一緒に食べましょう」
『はい』
部屋に戻ろうと階段をのぼっていた時だった。
「雪野、先生」
部屋から顔を出して夏目が手招きしていた。
『なに?』
「いや、それが…」
「む?どうした夏目、その左手のあざは……!」
ちょん、と斑が触れた瞬間。
ーーーーどぉんっ!!
「ふがっっ!?」
あまりの衝撃波に思わず、雪野は斑から手を離した。
「ニャ、ニャンコ先生!?」
『なに、今の!?』
「……ぬお。お前、左腕に呪いをうけていたな?ちっ、呪いの余波にやられた」
夕ご飯のエビフライの匂いで気付かなかったとボヤく。
「呪い?あっ!?先生……………!?」
焦げていた斑をよくよく改めて見た夏目と雪野はぎょっと我が目を疑った。斑のサイズが、手のひらサイズにまで縮んでいたのだ。
「『ぷっ』」
思わず、微笑ましく二人が笑う。
「笑いごとかあほう!」
「あ痛っ」
『い゛!』
夏目の顎に斑が頭突きし、その衝撃で夏目の後頭部が雪野の顎に直撃。大人しく二人は斑に謝った。
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