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こうして、最後の肝だめしが終わった。失神者続出、見かけぬ生徒を見たなど、皆にとっても不思議な肝だめしとなったようだった。
「元気で」
「おう…」
『またね、笹田さん』
越して行く笹田のお別れ会。贈られた花束を抱えて、笹田は微笑んだ。
「…ええ、また。ありがとう」
手を振る笹田に、時雨を思い出す。交差しようとする心に、笹田も何かをきっと感じただろうと、夏目は口元を僅かに緩めた。
「旧校舎にはもう子分共の気配もないな。共にいったか」
蝉の声を聞きながら、斑と共に二人は帰路を歩く。
「いったといえば、あのうるさい女ももう越していったのか?」
「ああ、思えば転校を見送る側ってのはほとんど初めてだ」
ーーーーけっこう、さみしいものなんだな。
遠くを見つめつつ呟いた夏目を、雪野と斑が見つめる。
「ふん、人とは本当に軟弱な。そのうちなれるさ、私はなれた」
そう言った斑を、少しばかり意外そうに夏目は見下ろす。もしかしたら、元気付けてくれているのだろうか。
夏目は雪野と顔を見合わせると、笑顔を見せた。
「あはは。そうかな、だったらいいな」
「む?何だ?笑うところか?」
『ふふ…』
すれ違う存在が見える。
交わろうとする言葉が聞こえる。
そして、今日も噛みしめるのだ。
出会いという奇跡を。
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