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「夏目君!?どこ!?」



笹田の焦ったような声が聞こえ、夏目は我に返る。



「ちっ。常人相手にケモノの姿は面倒だ」



猫になるかと思いきや、どろんと斑が変化したのは、雪野と同じセーラー服を着た女子生徒だった。



「化けれるのか…って先生メスなのか!?」

「阿呆、女姿のほうが人は騙しやすいものだ。中年男あたりがいいのか?しぶいのに化けれるぞ。ホレ…」

「『わぁいい!』」

『女の子姿がいい!!』

「おっさん連れ歩く言い訳を思いつかない!!」



変化する斑に慌てて拒否をする。



「夏目君。鈴木さん!?良かった、無事だったのね。大丈…」



ーーーーがしっ.



「まぁヒマツブシにはなるだろう。脱出までは面倒みてやるから安心しろ」



声に気づき駆けてきた笹田の頭を鷲掴み斑はマイペースにそう言った。



「だ、脱出って?あの勝気なお嬢さんは鈴木さんのお友達?」

『うん…どーしても来たいって。ほら、最初のも彼女のイタズラで…あ、皆は先に帰ったから』



適当に話を合わせていると、ヒソヒソ話をしていた妖怪に斑は何やらご立腹。



「どうしたのかしら。変わった人ね」

『うん』

「(人型でよかった…しゃべりすぎだ…)」



自由な斑に人型に安心した。



「先生、何話してたんだ」

「おう。しめたぞ夏目、雪野。例の妖、友人帳に名があるらしい。あの妖の名は「時雨」」

「妖の名…?」



反応を示したのは笹田。



「ひょっとしてそれがあの人の名前!?」

『(「友人帳」に名前が…)』



肩にかけていたカバンから、雪野は友人帳を取り出そうとカバンを開ける。



「!今何か動いた!」

「笹田」



集まり出した下っ端の妖怪の姿が、この異様な空間により笹田にも僅かに見える。追いかけようとした笹田を慌てて夏目が止める。



「どこ行くんだ」

「時雨さまを探すの。今日が会える最後の機会かもしれないでしょう?人嫌いになった神さまが、泣いてた人の子の為に一緒に探しものをしてくれた…このお守りがどれだけ私にとって大切だったか、見つけてもらってどれだけ私がうれしかったか。伝えなきゃいけない気がするの。不浄なんかじゃない。時雨さまはその優しさで、わたし救ってくれたのよって」



笹田の真髄な言葉に、夏目の目が見開かれる。



「もし夏目君が、時雨さまを見ることがあったらそう伝えてほしいと思ったの。もし、そんなことがあったらでいいからーーーーありがとう夏目君。こんな話、聞いてくれて」



ありがとうーーーー…。



「奴の気配は屋上にあるぞ。雪野、名は割り出せたか?」

『私、時雨さまの姿見てないけど』

「なに!?お前は一体今まで何してたんだ」

『順番と皆を待ってたよ…』



ーーーーグラ…

はっと、夏目は笹田の隣で揺れた棚に気づいた。



「あぶない!」



笹田の手を引き寄せ、倒れる棚から庇う。その時、倒れた棚の裏から、妖怪が横切るのを見つけた。



「!待て」

「夏目!?」

「雪野と先生は笹田を安全な処へ」

「何!?お前は!?」

「やめさせる!名前を返して説得する」

『ちょっ、貴志くん!友人帳はこっちーーーー……って、行っちゃったよ…』

「人の話を聞かんヤツだ」

「ユウジンチョウ?」



首を傾げる笹田に雪野は笑って誤魔化した。


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