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「六組目ー、そろそろ出発!」

『(貴志くん…大丈夫かな)』



先に出発した夏目と違い、雪野は一番最後の二十番だ。しかも、先ほどから誰も戻ってこない。クジ引きの事もあり、楽観視できない雪野は落ち着きなく壁際に立っていた。



「鈴木、そわそわしてどーした?」

「トイレか?」

『え!?違うけど…』

「鈴木は誰と何番目?」

『十組目。最後だよ…ペアは笹田さんだけど、様子見てくるって』

「誰も戻ってこねーもんなあ」



そういえば、先生も戻ってこないーーーー…。

ふと気づき、本当に大丈夫なのかと雪野は暗い廊下の先を見つめた。

それから続々とペアが減って行くが、誰一人として戻ってこない。



「おいおい…どーなってんだ?ちょっと行ってくるから、ここにいろよ」

『え…』



止める間も無く、実行委員の生徒は駆け足に行ってしまい、とうとうその場には雪野一人となってしまった。流石に恐く、ほんの少し顔を青ざめ、階段に腰掛ける。



『ふう…(やっぱりこれ、おかしいよ…)』



皆は無事なのだろうか、捜しに行った方がいいだろうかと、雪野が立ち上がろうとした時だった。



「なんだ、お前一人か」

『!ニャンコ先生!』



ぼす、と雪野の頭に背後から斑が乗っかる。



『戻ってこないから心配したよ』

「夏目はどうした?」

『行ったきり戻ってこない。他の皆も…ねえ、これってやっぱり妖怪?』

「ああ。しかもそれなりの…」

「あれ?皆いない…何処へ?」



笹田の声が聞こえた。



『さ…』



雪野が声を掛けるより早く、斑が動いた。



「わ」

「え?夏目君?」



駆け出した斑が、笹田に気づかれるより前に夏目の服を咥えて引っ張り込んだ。



「!雪野、ニャンコ先生」

「子分共は下等だが、相手は意外と大物だぞ」



どろん、と斑が本来の姿へ。



「面倒だからさっさと帰るぞ。強力な結界だが、私程の者なら何とか外へ出られる。乗れ」

「!皆はどうするんだ」

「放っておけ」

『そんな!』

「お前達、あまり人間が好きではないだろう。夏目、お前も子供の頃の夢をよく見ているじゃないか。他人など放っておけばいい」

「…おれはそこで逃げてはいけないんだ、先生」



しっかりと斑の目を見つめて、夏目は言った。



『「友人帳」には、人に見切りをつけたレイコさんとミヨさんの悲しみがいっぱい詰まっている。でも、わかってきたんだ』

「そう。人の優しさも、可愛さも、少しずつだけど…だからやれることはやりたい。だから先生…」



はあ…と、斑は何も言わずにため息。



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