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結局、丸一日保健室で過ごした雪野は一足先に帰ろうとしていたのだが、なんとまあ帰り道にまたしてもカッパが倒れていた。
『………』
学校で買ったばかりのペットボトルの蓋を開けて、呆れながらも水をかけてやる。
『何してるのお前…』
「お、お礼を申したく待っておりましたら干あがりまして…恩人様、せめてお名前を」
『…朝お前を助けたのは私じゃないよ』
「はて?確か掴んで離さなかった気が…」
『ああ、うん、すごく困ったあれ…男の子がいたでしょ。その子だよ助けてくれたのは』
そして、なんだかんだと二人木陰に並んで夏目を待つことに。
『(何やってるんだろ…)』
「何やってんだ?」
『あ、貴志くん』
呆れを滲ませつつ怪訝そうに夏目が歩いてきた。
『貴志くんを待ってて、またこの子干あがってたの』
「またか」
「恩人様!恩人様のお名前をお尋ねしたく待っておりました。お名前は?」
「…「夏目」」
「…ナ、夏目?「夏目」様?」
がしっ、とカッパは夏目の腕を掴む。
「ひょっとして、あの世にも不思議な「友人帳」をお持ちと噂の「夏目レイコ」様?」
僅かに、目を見開いて夏目は身を引いた。
「手にすれば多くの妖の魂を束縛し、従え、統べることが出来るという…いわば夏目親分さん!!」
ミーハー全開のカッパにレイコじゃないと否定する間を逃す。
「感激っス!!」
「わーなつくなー!」
行くぞ雪野!慌てて夏目は雪野の手を引いて走り出す。
「ありがとうございました夏目の親分ー」
「その呼び方やめろー!」
遠ざかるカッパに夏目は叫んだ。
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