映すもの【後編】
妖を感じることが出来る友人、田沼が妖にとりつかれた。その妖は壊れた鏡の欠片を集めきるまで田沼から放れる気はないらしいので、夏目は目を離すのも心配で田沼邸に泊まりこむことになった。
「ーーーーというわけで、私達も出来る限りの事は頑張りましょう」
『うん!』
雪野はタキの家へと泊まり、夏目と田沼の為にタキと共にお守り作りだ。
『お守りの作り方が載った資料まであるなんて、さすがだね』
「実際に作るのは初めてだけどね」
数冊用意した資料をタキはパラパラと捲る。
「…夏目君にはこのお守りが良さそうね。とりつかれた人用は…」
『……透、一応あったよ』
続いて田沼用に資料を探していたタキの背後で、微妙そうに雪野が声をかける。
「『…』」
見つけた資料の挿絵にあるお守りは、苦悶の表情を浮かべた人のような顔をしていて不気味で、思わず無言になった二人だった。
『んー…なかなか進まない』
「意外と難しいわね」
部屋に戻り、資料と睨めっこしながらお守り作りを続ける。
「できた!」
『うわ!もう明け方!?』
鳥の囀りが聞こえる白んできた空にぎょっとして、二人は慌てて数時間だけの睡眠をとって登校した。
「おはよう夏目君、田沼くん」
『おはよう。昨日は大丈夫だった…?』
登校してきた夏目と田沼に早速二人は声をかけた。
「「……おはよ…」」
「『…大丈夫?』」
げっそりと疲れ切っている二人に尋ねずにはいられなかった。
「…よくおぼえてないけどおれ、何かすごいの吐いた気がする」
「えっ!?何食べたの!?」
「……」
田沼の呟きにぎょっとする雪野とタキだが、事情をする夏目は複雑そうに黙秘した。
「ーーーー…夏目君、これ」
「え?」
「家の資料を見て作ったお守り。雪野と一緒に作ったの」
手のひらに収まるサイズの人形のようなお守りを手渡す。
「ーーーー役に立つかあやしいけれど…何も出来ないと歯痒くて」
『気休めかもだけど持ってて』
二人の気遣いに夏目は微笑む。
「ありがとう二人とも。成程、徹夜して作ってくれたのか」
「え」
「二人はすぐクマが出来るな」
その指摘に顔を見合わせた雪野とタキは、眉尻を下げて笑い合う。
「…もっと手先が器用になりたいわ」
『同感…あ、田沼君はこれ。とりつかれた人用なんだって』
「ありが…うわっ」
受け取ろうとした田沼の手が止まる。
「何か…恐いぞ…」
「仕方ないの。そう書いてあったから」
『作るのも恐かった』
隣で夏目もお守りの風貌にコメントし辛そうだった。
「ところでニャンコ先生は?」
「授業中は校庭をパトロールしてくれてる」
こうして鏡の欠片探しがはじまった。
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