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4


「ちっ…人の子のくせに生意気な程の力だな…」



田沼から出てきた白い靄が、徐々に人の形へと変わる。



「!お前が田沼にとりついている妖か」

「ーーーーああ、そうさ。友人を探す途中雷にうたれてしまってね。大事な私の鏡もその時砕けて、この辺りに飛び散ってしまったんだ。欠片を探そうにも雷にうたれては回復が遅くてね。この子を依代にさせてもらっているんだ」

「!田沼に穴を掘らせたのは…その鏡の欠片をーーーー…?」

「ああ。あの辺りにも落ちたはずだから探していたんだ」



窓から田沼が土を掘る姿を見つけて、夏目は走り出したのだ。



「欠片達は、光るものに溶けこみ姿を隠しているーーーーそしてどうやらひとつは、お前の目の中に落ち、隠れて、他の欠片が近付くと「拾ってくれ」と共鳴して痛むんだろうさ」



夏目の右目が痛み出したのも、欠片が近くにあったからだったのだ。



「ーーーーさあ。私の鏡をかえしておくれ」

「!!」

『貴志君!』



ーーーーすぱぁん.



「待てい!!」

「!ニャンコ先生、タキ」



妖の手が夏目へと伸ばされた時、窓を勢いよく開け放ち現れたのは斑とタキだった。



「…チッ」

「あ」



夏目から手を離した妖は、再び田沼の中へと入り込む。気絶していた田沼がゆっくりと起き上がった。



「…まあ、何にしろしばらく、この体に宿らせてもらう」

「何だと!?」

「田沼君!」

「安心しろ。そう長くは意識を乗っとれはしないーーーーしかし、無事にこいつをかえしてほしければ」



笑みを消した田沼は夏目へと目を向けた。



「協力しろ小僧。鏡の入ったその目があれば、欠片集めも容易かろう。鏡さえもどれば私は去る」



脅迫めいた取引だが、田沼の目は真剣なものだった。



「勝手なことを」

「!先生…」

「これ以上厄介ごとに付きあわされてたまるか。さあ」



ーーーーカッ.



「出ていくがいい!」

「ぎ…ゃ…!」



斑が光を放てば田沼から妖の影が引き放された……かと思われたが、そう簡単ではなかった。



「…まだだ、まだだ…」



はっと夏目は目を丸くする。



「鏡を集めるまで…放れはせんぞ……うう、う……」



一度は放れかけた妖も、弱りはしたようだがすぐにまた田沼の中へ。



「む!?私の光でも放れぬとは何と執念深い奴」

「田沼!」

「田沼君」

『しっかりして』



慌てて夏目達は田沼に駆け寄る。



「大丈夫か!?」

「…ああ…事情は何とか聞こえていたよ」



痛む頭を抑えながら田沼が起き上がる。



「ーーーー…鏡の欠片を集めれば、出ていくんだな」

「ーーーーああ、そうだよ」

「!」



再び田沼の意識を乗っとったらしい妖に、夏目は複雑そうに睨んだ。



「…それが一番安全だろうな。無理やり追い出せば精神が危険かもしれないぞ」

「ーーーー…私も手伝っていい?」

『透』



急を要する事と、人手が必要な欠片探しに雪野は一瞬躊躇した後頷いた。



「ーーーー…夏目」

「田沼」



意識が戻ったらしい田沼に夏目はすぐに反応する。



「すまないが鏡集め、付きあってくれないか」

「もちろんだ」



迷うことなく頷いた夏目に田沼は微笑った。



「ーーーーありがとう」



話がまとまり、タキとは途中で別れて帰宅途中。



「ーーーーとりつかれているからなのか、少しわかるんだ」

「ーーーーん?」



何がだろうかと、夏目と雪野は田沼を見る。



「…すごく大切な鏡らしい」

「え」

「ーーーーどうやら友人が病気らしくて。その病気を祓う力を、あの鏡は持っている…らしいんだ」

「ーーーー友人のため…」



妖にも、譲れない事情があったからこそ、田沼から放れなかった。そんな妖を思って、無言になった三人に風が吹き抜ける。



「ーーーーそれと…警告もしている」

「警告?」

「その鏡はとても強い力を持っていて、欠片を狙ってくる妖もいるようだから、気をつけろと言っている」



ーーーー狙ってくる妖かーーーー…。

物騒な警告に警戒心を強めた夏目達の背後を、付けねらう影がいた。





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