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2
「あ。田沼」
登校中。先を歩く田沼の後ろ姿を見つけ、夏目は声をかけた。
「もう大丈夫か?ーーーー本当にカゼで?」
「ああ」
『まだちょっと咳があるね』
咳き込んだ田沼に雪野は心配そうにする。
「そうなんだ。だから、しばらく近付かないほうがいいぞ二人共」
「え」
人当たりの良い笑顔を浮かべ、手を振った田沼は先に学校へと向かった。
「……」
咳き込む田沼の後ろ姿を見送る夏目が寂しそうで、雪野は気にしつつも何も言わなかった。
『(どうしたんだろ、田沼君)』
休み時間、雪野は飲み物を片手に朝からよそよそしかった田沼を思い出す。
ーーーーパリン.
「うわっ」
廊下の角を曲がった先で、何かが割れる音と共に驚く声が。何かと顔を向けると、先生が壁に向かって立っていた。
『ーーーー先生?どうしたんですか?』
「おー鈴木。姿見が急に割れたんだ。古いから老朽化かな」
そう呑気に言う教師の足元には鏡の破片が散らばっていた。
『粉々じゃないですか。ホウキを…』
持ってくる。そう続ける前に、目の端に何かが過った気がして雪野は振り向く。
廊下の曲がり角へと、金槌を持つ人影が消えていくのが見えた気がしたのだが…。
『(気のせいかな?)』
曲がり角の向こうを見つめるも、先には階段があるだけで誰もいなかった。
ーーーーそれから数日後。
『じゃあ、あれから田沼君と話してないの?』
「ああ…」
浮かない顔して夏目は頷く。結構堪えている様子に何と声をかけようかと雪野は悩む。
『(気にすることないよ…も、違うよな…どうしよう…)』
ーーーーだっ.
『…え、貴志君!?』
突然走り出した夏目に、雪野は何事かとぎょっとして、窓の外を見下ろした。
『(外…?何が…)』
夏目が見ていた窓の外を見下ろすも、何もない。
『(田沼君見つけたのかな)』
そう首を傾げつつ納得して、教室へと戻るべく廊下を歩いていた雪野に、クラスメイトが声をかけた。
「鈴木さん。あれ、鈴木さんトコの猫じゃない?」
目を瞬かせた雪野が窓の外を見下ろすと、確かに斑が歩いてきていた。
『(先生?裏庭の方だ…)』
どうしたのかと、斑を追いかけ裏庭へと雪野は向かう。
ーーーーパリン.
廊下を走っていたその途中、耳に届いた何かが割れる音。はっと足を止めて雪野は音の方へと振り向く。
『(…割れる音…もしかして)』
あの金槌を持った妖が?
気になり、雪野は踵を返して音の出所らしき教室へと歩み寄る。
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