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映すもの【前編】







「雪野、これタキから」



学校からの帰り道、夏目が雪野に差し出したのは一枚の写真。



『写真?ああ…文化祭の…』



受け取った写真を見下ろせば、何かが吹っ切れたように笑顔を浮かべる雪野が写っていた。



『……誰かを彷彿とさせる笑顔の私がいる…』

「だな」



顔を引きつらせる雪野に夏目は笑う。



『…それで、寄りたい所って?』



複雑そうにしながら写真を仕舞いつつ雪野は尋ねる。



「田沼の家なんだ。田沼の写真も預かったから届けに行ったら、高熱で休みだったから…心配で…」



早速、田沼の家へと出向いたら、田沼の父親が出迎えてくれた。



「おや夏目君、雪野ちゃん、いらっしゃい」

「あの…要くんは大丈夫ですか?」

「ああ、お見舞いありがとう。でも移ると大変だからね。明日は出席出来ると思うよ」



田沼本人には会えず、住職に挨拶をして二人は田沼家から帰る。その道中、夏目が斑を抱えてため息。



「昨日妖に近付いたせいじゃないだろうか…」



ぽつりと夏目は呟く。昨日森で鉢合わせた夏目と田沼の近くには、妖の姿もあった。



『田沼君、妖の気にあてられやすいからね…』



人の事言えないけど。と雪野は付け足す。



「そうかもしれんが、それはあいつが軟弱なのであってお前のせいではないだろうが」

「でもおれを庇ってくれたんだ。用心棒が飲んだくれている間に」

「私からはぐれたお前が悪いのだ阿呆め!」

「何だと!」



そうして始まる言い合いに、雪野は慣れた様子でため息をして傍観した。




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