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3


「どうやら、そこそこの妖を封じた石だったようだ」



放課後のこと。夏目の部屋にあった小石が人を操り夏目の手に戻ってきたということで、ヒノエを再び部屋へと呼んだ。



「服についてた間、お前の力を吸いとって人一人操る力を得たんだろう」



ちなみに石の方は、中身が逃げたのでただの石に戻っている。



『その妖の目的って一体…』

「どうも憑依形の妖のようだね、おそらくは。夏目に乗り移りたいんだろうさ」

「!」

「今日の接触でまた夏目の力を吸いとったようだし…学校とやらの物か人に隠れ宿って、夏目に取り憑く隙を狙うつもりなんだろう」



それはあまりに不穏な話だった。関係ない人々を巻き込みかねない状況だ。



「ーーーーおれが目的なら、他に害はないのか?」

「まあ取り憑かれてる奴がいるなら、多少奇行をとらされるかもしれないが…いいね夏目。隙を作らず、油断しないことだ」



ヒノエはそう言い聞かせる。



「まぁ、よく調べず踏っ飛ばした私にも責任がある。封じ直す方法を調べておくから、それまでは自分で踏んばるんだよ夏目」

「ーーーーああ。ありがとうヒノエ」



頷き夏目は礼を言う。雪野は外までヒノエを見送りに。



「夏目が心配だからって、無茶するんじゃないよ」

『うん。ありがとう』

「またね」



手を振り立ち去るヒノエに、雪野も手を振り返した。



「鈴木?」



ビクリと。背後から声をかけられ、雪野は恐る恐る振り向いた。



「鈴木、誰に手振ってるんだ?」



不思議そうにするのは西村と北本。



『え?えー…っと…む、虫がいたから、払ってた』

「虫?この季節にか?」

『そ、それより、どうしたの?貴志君に用事?』



ひきつらせながらも無理やり笑顔を浮かべ雪野は話をそらす。



「んー…いやさ、文化祭についてで来たんだけど……鈴木はちなみに、看板娘とかどうだ?嫌か?」



尋ねる西村に目を瞬かす。



『んー…別に、嫌じゃないよ』

「本当か?どうしても嫌ならな、無理しなくていいんだぞ。おれから辻には言ってやるし」



そう、念を押して気遣う西村に雪野は意外そうにして笑った。



『ふふ』

「あっ。笑うなよな、人が心配してるってのに」

『ごめんごめん』



こっぱずかしそうにする西村をまあまあと北本は宥める。



『無理してないよ、ありがとう。もしかして貴志君にもそれを聞きに?』

「……ああ」



笑われた後だからか、ふてくされたようにしながら西村は頷く。



「どうかな夏目…家でさ、販売係について何か言ってたか?今日とかさ、顔色悪くって…な?」

「ああ。本人は何でもないって言ってたけど」

「せっかくの文化祭、夏目が楽しく過ごして欲しいんだ」



面食らっていた雪野だったが、すぐに微笑んだ。



『呼んでくるから、本人に直接聞いてみなよ』

「あ、ああ」



大切にされてるな。微笑ましくて、クスクスと雪野は自分のことのように笑いつつ、夏目の部屋へ。



『貴志君、西村君と北本君が来てるよ』

「え?なんだろ…ありがと。行ってくる」



慌てて部屋を出て行く夏目をクスクスと見送っていた雪野は、まだ座布団の上で眠っている斑を見た。



『…ニャンコ先生』



傍に座り、頭を撫でる。



『今度学校でね、文化祭があるの。私や貴志君はバザーで販売係を任されたんだ。色んな出しものやお店があって、美味しいものもいっぱいあるから、先生も楽しいんじゃないかな』



気持ちよさそうに眠る斑にふふ、と笑った雪野は、夏目の石の件を思い出して笑顔を消した。



『ーーーー…うまく、いくといいなぁ…』



願いを込めて呟き、雪野は部屋に戻った。




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