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「ということで」



ホームルームの時間。文化祭に向けての話し合いで、黒板の前には辻が立っていた。



「うちの組が何をやるかですが」

「女装喫茶!」

「そんな男が1センチもおいしくない企画却下だ!バニーだバニー!」

「飲食は難しいよ。当日は廻りたいから展示系がいいなぁ」

「ええい静かに!バザーをやると言っただろ」



一気に騒がしくなった教室に辻は怒鳴る。



「ハリボテの店作って各家から使わないけど売れそうな物を出しあった中古品市だ!」



まだあーだこーだ言い続ける教室に構わずそれ以外は受け付けないと込めて辻が叫ぶものだから、クスクスと雪野は思わず笑う。



「そこ鈴木笑うな。こっちは真面目なんだぞ!…よーし、お前には看板娘を任ぜよう」

『え…ええ!』



にやりと笑い告げた辻に、ぎょっと顔を青ざめる雪野。



「お前美人なんだし、今みたいに笑って客を集めるんだ」

『むりむり。むりだって…』

「だーいじょうぶだって」

『いや…』

「売り上げも看板娘とかいた方が良さそうだしな」

「鈴木、頼んだぞっ」



やる空気に断る隙もなく、雪野はうな垂れた。



「ーーーーあっ。こら夏目、余所見すんな!」



窓の外を眺めていた夏目を辻は目敏く見つける。



「…まあいい。ついでにお前も販売係な」

「え」



戸惑う夏目だが、教室からは好感的な声が上がる。



「悪いけど困る。おれ接客は…」

「顔整ってる奴は問答無用で売り上げに貢献な」

「夏目君やって〜」

「でもおれ…」

「じゃあ残りの店員とセット作りの人員を決めるぞ〜」



あちこちから返事が上がり、雪野に続いて夏目も販売係となった。



「あはは」



その話を、ベンチに腰掛けタキにも世間話の一つとして話せば可笑しそうに笑われた。



「笑うなよタキ」

「ーーーーふふ、ごめんなさい。二組はバザーか。低予算、高利益だね。買いに行かなくちゃ」

『…いいよ、来なくて…』

「いやよ。看板娘を見に行かなくちゃ」

「…タキの組は?」



ふてくされる雪野を横目に夏目が尋ねると、なぜかタキは言いにくそうに口をまごつかせた。何かと、夏目と雪野が見つめると、タキはやっと口を開く。



「……男装女装喫茶…」

「へ、へぇ…」

『…そっか』



なんとも言えない沈黙。



「……」

「…お互いお祭り事は性に合わないけれど、こういうのは楽しんだ者勝ちね。腹括って楽しみましょう」

「ああ…そうだな」

『かっこいいね、透…』



吹っ切れてやりきってやろうじゃないかと、拳を握るタキに二人もそうすることにした。



「夏目」



あ、と夏目は声に振り向く。



「そっちの組は何をーーーー…」

「田沼」



笑う夏目や雪野の間に座るタキに、田沼は雪野にきょとんと目を向ける。



「友達?」

『あっ、うん。そっか、二人共初対面だっけ……ええと…透、一組の田沼君。田沼君も私や貴志君が妖を見ることを知ってて、色々話をきいてくれるの』

「えっ」

「「も」って…じゃあ君も…」



戸惑い驚くタキ。同じように目を丸くさせる田沼に夏目がタキを紹介する。



「田沼、五組の多軌だ…妖について色々詳しいんだ」

「え……そ、そうなんだ」

「あ、田沼君もひょっとして見えるの…?」

「え、いや…見えるというか…あ、多軌さんは見えるのか?」

「えっと、見えるわけじゃ…見たことはあるっていうか…」

「……」














「「「『(ーーーー…何だこれ照れくさっ)』」」」



思わず顔を赤らめて四人とも顔を俯ける。



「おい夏目、鈴木、ちょっといいか!?」



ビクッと二人は反応して、慌てて声をかけた西村へと駆け寄る。



「どうした西村」

「店員の衣装のことなんだけど…ーーーーって」



突如小声になった西村。



「あれ五組の無口でおしとやかな多軌さんだろ!?」



え?オシトヤカ?頬を赤らめる西村の言葉に二人して疑問。



「どういう関係だ!?まさか夏目のカノジョか!?」

「え?いや、友達…」

「何!?」



憎らしいのか悔しいのか、西村は羨ましそうに夏目を叩きまくっていた。



『話せばいいのに。呼んでこようか?』

「出来たら苦労しない!」



色々必死な西村に、雪野と夏目はそうか…。ともうタキについては触れなかった。




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