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露神







「ーーーー夏目」



冬。凍てつくような寒い季節がやってきた。



「夏目どうした?顔色悪いぞ」

「鈴木にいたっては顔から血の気が感じられないぞ」



学校帰りの夏目と雪野は北本たちと帰っていたが、途中木の陰に妖怪を発見。もちろん二人には見えてはいない。



『えっ……』

「…いや別に。雪野は朝から具合悪いんだよ」

「そうなのか?」

「無理すんなよ」

『うん。ありがと』

「『(何でこれが見えないんだろう……)』」



なんだかもう、見える方からは見えない方が不思議に思えてきてしまった。

それから夏目たちは二人と別れたが、その瞬間を狙ったかのように先程の妖怪が現れた。



「夏目殿、鈴木殿」

『さっきの…』

「夏目レイコ殿に、鈴木ミヨ殿ですね」

「…レイコはおれの、ミヨさんはこいつの祖母だ。彼女たちはもう亡くなって「レイコ殿、ミヨ殿」



冷静に夏目がなれた感じに言うが、聞く耳もたないように相手は遮った。



「噂に聞く友人帳≠お持ちでしょうか」

「!」

『貴志くんっ!』



雰囲気が変わったかと思うと、妖怪は友人帳を持っていた夏目を握りしめた。



「さぁおよこし友人帳=Bよこさねばお前を喰ってやるぞ」

「う…やめろ…」

『貴志くっ…わっ?!』

「そうだぞやめておけ」

『ニャ、ニャンコ先生!?』



妖怪に蹴りを喰らわせようとした雪野だったが、頭にズシッと重みを感じバランスを崩す。その頭には斑が乗っかっていた。



『ちょっ…おも…』

「あれは低級妖怪(オマエナド)が扱えるものではない。雪野と夏目(コイツラ)の死後、この私がもらう約束なのだ」

「!ニャンコ先生」

「うぬ、何奴じゃ」

「い…痛え!!」



容赦なく妖怪を殴り飛ばした夏目は雪野の手をとるとさっさと走り出した。







『貴志くん大丈夫?』

「ああ…ただいまー」

『ただいま』

「夏目殿鈴木殿」



家へと帰ってきた二人は、玄関からの声にビクリと反応する。振り返るとそこには、先ほどとは違う妖怪が立っていた。



「ご免くださいまし。どうか名をお返しくださいまし」



最近では、どこで聞きつけるのか妖怪たちが訪ねてきては徐々に名を返す日々がつづいていた。



「ただいま」



とてとてと帰ってきた斑が部屋へといくと、夏目と雪野がぐったりとして寝ていた。



「何だまた名を返してやったのか」

「ああ、疲れた、散々だ」



ぐったりとしながらも返事をした夏目の横では、死体か何かと間違われそうな雪野がうつ伏せに倒れていた。



「雪野も名を返したようだな」

「おれがちょっとダウンしてたらやるって言ってお言葉に甘えたんだが…」

「このざまか」

『…ん〜……』



バカにしたように斑が言うと反論する代わりに低く唸る。



「言っただろう、雪野(コイツ)は体力がない。術関係なら得意分野になるだろうが名前返しには向いてない」

「術?なんで」

「ミヨがそうだったからな。その血を受け継ぐ雪野にもそのセンスはある」



興味を示したのか軽く反応した夏目。雪野も意外そうに目を丸めていた。



「ま、これにこりたら名前返しは夏目がやることだ。雪野は暫く動けんし、夏目だって心配するだろう」

「『……』」

「しかしつまらん奴らだ。友人帳がガンガン薄くなっていくではないか…いっそのこと隙をついてこんなガキども喰っちまおうかな」

「『聞こえているぞインチキまねき猫』」



自分たちのことをちょっとは心配してくれてるのかとちょっと感動していた二人だがすぐに打ち消した。







『貴志くんごはんだよ』



斑で遊んでいた夏目のところに夕飯の手伝いをしていた雪野が呼びにきた。



「主人は遅いから先に食べちゃいましょう。そこの大根おろして頂戴ね」



夏目がダイニングに行くと塔子もいて、テーブルにはすでに料理が並べられていた。



「おお、美味そうですね」

「よかった!雪野ちゃんと一緒に作ったのよ」

「……雪野、お前料理…」

『ちゃんと塔子さんと一緒に作ったから大丈夫だよ』



サーッと顔を青ざめながら雪野と料理を見比べる夏目に雪野はムッとしながら言う。そんな二人を微笑ましそうに見つめる塔子はクスクスと笑った。



「どう?タカシ君の方はもうこっちの学校にはなれた?二人とも、私達にばんばん甘えてね。家族が増えて幸せだわ」

「………はい…」

『ありがとうございます…』



照れながらも返事をした二人。

席について食事をとろうとした夏目は、料理を見てはしを持ったまま固まった。



「(…小さな歯型…ネズミか…?)」

「なかなか美味ですな」



テーブルからの声にそちらを見る。



「夏目殿、鈴木殿、名前を返して頂きたい」



湯飲みの影には同じくらいの大きさの小人がいた。



「ぶっ!」

「ひゃー」

「タカシ君!?」



ーーーーガシャンッ.



「雪野ちゃんまでっ!?」



お茶を吹き出した夏目に驚き見た塔子と雪野。そしてテーブルにいたものを見た雪野は持っていたお茶を落としていた。

見えていない塔子は二人してどうしたのかと驚くばかりだった。



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